紅茶市場は“マンネリ化”しているのに、なぜ「ミルクとけだすティーバッグ」は売れたのか:予想の3倍(4/5 ページ)
2021年8月に発売された日東紅茶の「ミルクとけだすティーバッグ」シリーズが、異例のヒットになっている。22年3月時点で予想売上の3倍を達成、同製品をもっとも支持しているのは、従来ティーバッグ紅茶を買わない17〜24歳のZ世代だ。なぜ、若年層の心をつかんだのか。
なぜ、Z世代・ミレニアル世代にウケたのか
メインターゲットを30代女性としていた「ミルクとけだすティーバッグ」だが、SNS分析(発売前のタイミング〜22年3月)では、17〜24歳のZ世代の支持が圧倒的だったという。25〜34歳のミレニアル世代がそれに続き、逆にティーバッグ紅茶をよく購入している40〜50代からの反応は、ほぼゼロだった。
Twitterで同製品を支持した若年層が何をベネフィットに感じているかの調査では、「利便性の向上」がトップに。「贅沢(ぜいたく)」「おいしい」が続いた。
「ティーバッグ紅茶の世界は保守的であり、業界大手3社(日東紅茶、リプトン、トワイニング)の位置関係は何十年も変わっていません。商品自体の新規性も薄く、2002年にリプトンさんがピラミッド型ティーバッグを日本でも採用したのが、唯一目に見える分かりやすい変化でした」(竹田氏)
成熟している紅茶市場で明らかに目新しいコンセプトであり、分かりやすく利便性が向上した点が、Z世代に刺さった理由ではないかと竹田氏はいう。
ツイートでは、「職場でミルクティーを飲みたいときに便利」「粉末タイプみたいに甘くないのがいい」といった声が聞かれた。調べてみると、「甘さ」を抑えたことでZ・ミレニアル世代に売れた紅茶の事例はほかにもあった。
直近のヒット事例であるローソンの「チルド紅茶」は、22年4月の発売から5カ月で740万本以上を売り上げた。240ミリリットルで100円という手頃さに加え、Z世代の声を生かして甘さを抑えた「アールグレイ #ちょい甘」(現在は販売終了)が人気の火付け役になったようだ。
キリンの「午後の紅茶」は、甘さを理由に午後ティーを避けていた20代後半以降のワーカー層を取り込むため、19年に微糖タイプの「午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー」を発売(現在は販売終了)。約7カ月で5000万本を売り上げるヒットになった。
ザ・マイスターズ ミルクティーは、21年に売り上げが大幅に低下したことから22年3月で出荷が終了したが、同カテゴリーの商品として「キリン 午後の紅茶 ミルクティー 微糖」が22年4月に登場。ザ・マイスターズ ミルクティーより甘さを強調しつつカロリーは控えめで、顧客層を広げる目的があるそうだ。
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