「おとり広告」にマグロ偽装疑惑....... 「事件」続きのスシローが抱える経営の弱点とは(4/4 ページ)
問題が続く回転寿司チェーン「スシロー」。根源にある問題を特異な社歴により形作られたであろう独自の経営姿勢から探る。
ファンド主導の経営、東芝を連想
このようなファンド株主に気を遣いながら経営の舵取りをする様は、業種や規模は全く異なりますが、あの東芝をも連想させられます。東芝は相次ぐ経営不祥事による大赤字で上場廃止の危機に立たされた折に、外資ファンドのアクティビストたちを新たな株主として迎え入れたことで、常にファンド株主の顔色うかがう経営への転換を余儀なくされ、現在もなお迷走状態が続いています。
長期的な発展を願う企業経営の利害と短期的な利益を追求するファンド株主の利害は必ずしも一致しないものであり、ファンドの要望にまんま従うことが一般株主や利用者にとってマイナスにはたらくことも間々あるのです。
“事件”多発の背景に利用者軽視の経営姿勢?
度重なる「事件」の発生と、行政側からの厳格な指摘や指導を受けながらも、トップが会見を開いて謝罪および説明をするという姿勢すら見せなかったのは、大株主であるファンドには気を遣いながらも利用者のことは軽くみているような経営姿勢の表れなのではないかとも思われます。
さらに申し上げればスシローの一連の「事件」は、プロ経営者の増収至上主義による利用者軽視の姿勢から、起きるべくして起きたものではなかったのか、とすら思えてくるのです。
顧客サービス第一への転換で再発防止を
相次いだ「事件」はスシローの業績にも大きな影響を及ぼしています。7月の各社売上をみてみると、コロナ第7波の影響下で苦しい状況にありながらも、くら寿司が前年同月比1.3%増、元気寿司が同3.3%増、カッパ・クリエイトは同1.1%増と各社ともギリギリ前年比増を確保している一方で、業界トップのスシローだけが10.2%減と、唯一前年比で2桁減少に転じてしまっているのです。目先の業績に陰りが見えれば、ファンド系大株主は黙ってはいないでしょう(かっぱ寿司の事件以降、一人負けは解消されそうですが)。
「事件」が起きる→業績が落ちる→ファンド株主の目が気になる→増収至上主義で顧客軽視になる→「事件」が再び起きる......。スシローの信頼回復に向けては、そんな無限のマイナスループにはまる前に、数字づくりよりも本業を大切にして顧客サービス第一を貫ける経営者による経営姿勢の抜本的見直しが必要なのではないでしょうか。
逮捕者を出すような完全なコンプライス違反を起こしたかっぱ寿司とは状況は異なりますが、経営姿勢に大きな課題を抱え問題が表面化したという点では全く同じです。猛省なくして業界トップ企業としてのブランド復建に向けた道のりは、険しいと考えます。
著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役
横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「生クリーム好き歓喜」──セブンイレブンの“具なし”「ホイップだけサンド」に反響 商品化の狙いは? 広報に聞いた
セブン-イレブン・ジャパンが10月12日から近畿エリアなど地域限定で販売を始めた「ホイップだけサンド」シリーズがTwitterで話題となっている。商品名の通り、ホイップクリームのみを挟んだ“具なしサンドイッチ”となっている。商品化の経緯を聞いた。
「かっぱ寿司」と「はま寿司」 衝撃の社長逮捕劇を15年前の“因縁”でひもとく
不祥事が相次ぐ回転寿司業界。2回に分け「かっぱ寿司」「スシロー」をそれぞれ分析する。
「工場の製造が追い付かない」──ファミマの「クリームパン」、4週間で650万個販売 好調の理由を広報に聞いた
ファミリーマートが発売した「ファミマ・ザ・クリームパン」の売れ行きが絶好調だ。販売開始から8日で、クリームパン単体で220万個を売り上げた。1秒に3個売れている計算で、工場の生産が追い付かず、品薄になっているとして、一部の店舗では“お詫び”の掲示物をするほどだ。なぜここまで売れているのか。好調の要因を同社広報に聞いた。
ソニーの「着るエアコン」“バカ売れ” 猛暑追い風に「想定以上で推移」
連日の猛暑が続く中、ソニーグループ(ソニーG)が4月に発売した、充電式の冷温デバイス「REON POCKET 3」(レオンポケット3)の売れ行きが好調だ。同製品は「着るエアコン」とも呼ばれており、ビジネスパーソンを中心に売り上げを伸ばしている。
“NHK受信料を支払わなくていいテレビ”を製品化 ドンキの狙いは?
「ドン・キホーテ」が発売した、「ネット動画専用スマートTV」がネット上で大きな話題を呼んでいる。テレビと称しながら、テレビチューナーを搭載していないためだ。製品化の狙いと経緯を聞いた。
カップヌードルの「溶けたアイスのフタ止めフィギュア」が話題 制作の狙いは? 日清食品の広報に聞く
日清食品ホールディングス(HD)が販売する「カップヌードル」の公式Twitterアカウントが公開した「溶けたアイスのフタ止めフィギュア」が話題となっている。なぜこうしたものを制作したのか。狙いを日清広報に聞いた。
川本真琴さん、「サブスク考えた人は地獄に堕ちて」投稿で謝罪 「不快な思いさせた」
人気アニメ『るろうに剣心』の主題歌『1/2』などのヒット曲を手掛けたことで知られるシンガーソングライターの川本真琴さんが自身の公式Twitterアカウントを更新。「サブスクを考えた人は地獄に墜ちてほしい」とする過去の投稿について謝罪した。
「利用者がいたずらで140度に設定」──滋賀県の老舗銭湯、“サウナテロ”の被害に 店側は激怒「悪質な営業妨害」
滋賀県の老舗銭湯が「お客さまがサウナ室の温度セットを勝手に触り、男女とも140℃以上にするという前代未聞のいたずらをされた」と投稿し、注目を集めている。同施設は「悪質な営業妨害」として滋賀県警に被害届を出すとともに、施設内の防犯カメラや常連客などと協力し、犯人特定に向けた情報収集を進めている。
「急速充電でバッテリー故障」投稿に反響 BEVの正しい充電方法とは? 日産広報に聞いた
電気自動車(EV)を急速充電しすぎたらバッテリーが故障したとする投稿がTwitterで注目を集めている。日産自動車広報にEVの適切な充電方法などを聞いた。

