ボートを製造しているヤマハが、「カプセルホテル」をつくれたワケ:水曜日に「へえ」な話(2/4 ページ)
ヤマハ発動機のニュースリリースを見ていたら、ちょっと気になるネタがあった。同社のFRP技術を使って、カプセルホテルのベッドの部分を開発したのだ。なぜ気になったのかというと……。
なかなか売れない
「ヤマハ」と聞けば、バイクやボートを想像する人が多いと思うが、そもそもなぜプールをつくっているのだろうか。その歴史は古く、1974年までさかのぼる。ジャイアンツの長嶋茂雄氏が現役を引退したり、ユリ・ゲラーが日本にやって来てスプーンを曲げたりしていたころに、FRP製のプールを発売したのだ。
「プールをつくる」きっかけは、景気である。73年にオイルショックがあって、日本経済に不安が漂っていた。先行き不透明感が漂っている中で、ヤマハは「なんとかしなければいけない。新しい事業を始めなければ」という方針を掲げて、なにかできることはないかなと考えたときに、ボートやヨットで使用している素材「FRP」を使ってはどうかという話になった。
当時、経営メンバーのひとりが海外出張したときに、飛行機から住宅地を眺めていた。そのとき、目に飛び込んできたのが自宅のプールである。「富裕層の人たちに、プールを提供できないか」と考え、ボートの“底”に着目した。ボートの底はFRPでできているので、それをひっくりかえせばプールができるのではないか。というわけで逆転ではなく、“裏返し”の発想で完成させたのだ。
とはいえ、日本の住宅事情は海外とは違う。自宅にプールがあるところは少ない。その昔、庭に池をつくって、そこで錦鯉を飼っている家はそこそこあったが、いまは見かけることが少なくなった。池にたくさんの虫がやってきたり、色鮮やかな錦鯉を飼うことがステータスでなくなったり、大きな庭がある一軒家に住む人が少なくなったり。さまざまな要因が重なって、自宅で池を見かけることは少なくなった。
や、ちょっと話がそれてしまったが、日本の家にプールを備えているところは少ない。そもそもプールを設置しようと考えている人がほとんどいない。こうした背景もあって、ヤマハはプールをつくったものの、すぐに結果を出すことができなかったのだ。
事業を始めてから3年がたった、ある日のこと。「なかなか売れないなあ」と悶々としていたところ、とある幼稚園の園長さんが興味を示した。当時、園児が水遊びをするときには、ビニール製が多かった。幼稚園の職員がえっちらおっちら空気を入れていたので、大変である。職員の負荷を減らすために、プールを導入することに決めたのだ。
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