朝倉未来プロデュースのBreakingDown6がバズった理由 過激化に必要なリスクマネジメント:ストーリー追求とのジレンマ(2/5 ページ)
朝倉未来がプロデュースする「1分1ラウンド」で最強を決める総合格闘技エンターテインメント「BreakingDown」は、出場者のほとんどがアマチュアであるにもかかわらず、イベントとして独自の存在感を示している。その第6弾となる「BreakingDown6」が11月3日に開かれる。
動画時代にマッチしたBreakingDown
近年のテレビ放送ではコンプライアンスが厳しくなり、お笑いの世界でも「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティ」を放送するのは難しくなった。かつてTBS系ではバラエティ番組『ガチンコ!』の名物企画「ガチンコ・ファイトクラブ」が人気を博したものの、現在の社会的状況では難しい部分があるだろう。
歴史とルールが確立されているボクシングは、地上波でも放送される。一方、ルールがあるとはいえ素人のケンカに近いBreakingDownは、地上波の報道で取り上げられることは少なく、まるで存在していないような扱いだ。
一方、Z世代に代表される若者は、テレビを視聴しなくなっている。チャンネル数が限られたテレビから、見たいものを好きなだけ見られるYouTubeなどの動画投稿サイトに多くの若者が流れているのが実態だ。そこでBreakingDownは、格闘技と親和性が高いPPVに活路を求めた。
加えて新型コロナウイルスの影響もあり、大きな会場を使ってイベントを開催することが難しくなっている。BreakingDownは大きな会場を借りることなく、小さなスタジオなどを借りて開催されることが多い。結果的に感染予防という観点からも理にかなっていた。
現地で観戦できる人数は限られているため、今回のBreakingDown6では会場チケットとしてVVIPオフライン観戦チケットを110万円で、VIPオフライン観戦チケットを20万円で発売する。ただ、そこだけでは大きな収益は望めない。
前述のPPVによって、リアルでは大勢の集客ができない点をカバーするのだ。サイバーエージェントが運営する動画配信サービス「ABEMA」で、11月3日開催の「喧嘩(けんか)道 presents BreakingDown6」を「ABEMA PPV ONLINE LIVE」で生中継する。このビジネスモデルによって首都圏だけでなく、日本中に住んでいる人をターゲットにできるのだ。
素人の大会にどれだけの人を集客できるのかは、予測できない部分も多い。リスクヘッジという意味でも、PPVに振り切ったほうが合理的なのだ。こうしてBreakingDownは、リアルで多くのチケットを販売しなくても成立するビジネスモデルを確立させた。
BreakingDown6のオーディションの様子を映したYouTubeの動画は、過去最速で累計1000万再生を突破したという。UUUMが7月に発表した5月期の1再生あたりの広告収入は0.281円だった。単純計算はできないが、UUUMの数値を参考にするなら、BreakingDownはオーディションの動画だけで数百万円の広告収入を得た可能性がある。
加えてBreakingDown5の関連動画再生回数は1億回を超えたという。BreakinDown側による関連動画の定義が不明なので厳密な計算はできないものの、少なくとも数千万円分の「広告収入経済圏」になった可能性があるといえるだろう。
これには、YouTubeチャンネル登録者数が290万人を超える朝倉未来の影響力が多大な貢献をした。大勢の格闘家が自身のチャンネルを持っているものの、朝倉の登録者数は圧倒的だ。那須川天心でさえ98.9万人で、100万人に到達していない。昭和世代で、現在の総合格闘技人気につながる道を開いた1人である前田日明でさえ約22万人だ。
朝倉は自身のYouTube上で、番組作りについて分析している。高い再生回数を獲得するために必要なものとして、「共感性」「人間同士のトラブル」「人生の変化」の3つをあげた。格闘家に限らずコンテンツに関わる企業担当者は参考にできる考え方だ。
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