異色の新作『水星の魔女』が話題 ガンダムが“冬の時代”を乗り越えて愛され続ける理由:新連載:大澤孝「トイクリエイターの発想法」(3/4 ページ)
ロボットアニメの代名詞ともいえるガンダムシリーズ。10月から放映中の新シリーズ『水星の魔女』が話題だ。かつてロボットアニメといえば隆盛を極めた時代もあったが、なぜガンダムだけがかように生き残り続けられるのか。「ファースト世代」でもあるトイクリエイター・大澤孝氏が解説する。
同じ「枠の破壊」でも大きな違い
ガンダムと同様、長期間にわたりシリーズを展開しているコンテンツとして、ほぼ同時期にスタートした『スター・ウォーズ』が挙げられる。スピンオフも含めていまだに新作が作られ続けているが、ディズニーが手掛けた「続三部作(エピソード7〜9)」が酷評を受けたことは記憶に新しい。これは世界中のコアなファンが持つ「スターウォーズはこうあるべき」という枠を、悪い意味で壊してしまったことが原因だろう。
枠の破壊という意味では、ガンダムも同様だ。スターウォーズとの違いは、しっかりと軸足を置きつつ、世界観を“あえて”壊す、言い換えると枠を拡大して、世界観を広げる試みをしている点にある。
ファーストの続編である『機動戦士Zガンダム』では、多くのファンが前作主人公のアムロが活躍するのを期待していたはずなのだが、作品へ真っ先に登場したのはノースリーブにサングラスという、当時としても絶妙にダサいいでたちをしたアムロのライバル「シャア」であり、作品半ばで登場したアムロは何ともパッとしないモビルスーツでちょっと顔を出す程度。作品自体は今見れば十分に楽しめるものだが、当時のショックは大きかった。
その後も最強の座をかけてガンダムとガンダムが文字通り格闘する『機動武闘伝Gガンダム』、どこかのアイドルグループのようなイケメンパイロットたちが戦う『新機動戦記ガンダムW』や、『プラモ狂四郎』よろしくガンプラ同士のバトルを描いた『ガンダムビルドファイターズ』など、ファースト世代にとってはにわかには受け入れがたいシリーズ作品が展開され続けた(もちろん個々の作品も素晴らしいことは間違いないが)。
一方で、ファースト世代を狙い撃ちした宇宙世紀シリーズの続編なども発表し続けている。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』シリーズこそはファースト世代が長年求めていたものだし、22年はファーストガンダムの名エピソードである『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が現在のクオリティーで映画化されるなど、定期的にオールドファンを喜ばす話題を提供している。
さまざまな姿を見せつつ、軸はぶらさない――こうした新規/既存ファンにバランスよく配慮した取り組みの結果が、ガンダムシリーズの長寿化につながっていると考えられる。
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