仕組みに問題はないのか 高齢者が病院に行きすぎてしまう理由:海外と比した(3/3 ページ)
高齢者で、「月に1回以上、病院や診療所に行く人の割合」は、日本が6割、米国は2割、ドイツが3割、スウェーデンは1割。そうなる理由は?
病院に行く回数が増える理由
まず、欧米の「家庭医」「主治医」制度のような仕組みがないこと。患者は、まずは必ず自分が選んだ「家庭医」で受診し、病院や専門医には家庭医の紹介がなければ診てもらえないような仕組みです。
日本では、基本的に誰でもどの病院、診療所でも受診が可能です。目が悪くなれば眼科へ、腹が痛ければ内科へ…と、状況に応じて患者自身が考えて受診します。そうすると、風邪のような軽い症状で病院の外来に行くような人が増える、いわゆる“はしご受診”といわれる1人で何カ所もの病院を使っているケースが出る、患者のことをよく知らない医師が診るので診察・治療に無駄が生じる、といったことが起こります。
また、日本の病院、診療所は民間が多いため、売り上げ・利益が必要で、患者という顧客を継続・開拓し続けなければなりません。治療して治ったら終わりではなく、たとえそれが加齢現象で、治るようなものではなくても、「病気」として診察したり、診療報酬が多く発生するような処置をし続けたりする医療機関も存在します。治っていて、何ともなくても「また来週、来てください」と言われれば、行かざるを得ないでしょう。
高血圧の基準を「収縮時140mmHg」と変更することによって、「高血圧症」の人を多く生み出したのが典型的ですが、民間の医療機関が、患者という顧客を生み出し続けなければならない以上、そのマーケティングや営業行為に乗せられている、病院通いの高齢者が減ることはないはずです。
諸外国に比べて突出して多い、日本の高齢者の病院通いはこうしてみると、日本の医療制度に関する構造問題、すなわち改革の遅れに根本的な原因があるのだろうと思います。(川口 雅裕)
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