なぜスシローやかっぱ寿司で不祥事が? 業界を苦しめる「安かろう、良かろう」戦略と過剰な期待:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/7 ページ)
大手回転寿司で不祥事が相次いでいる。その背景には、安くて良いものを求める消費者の心理があると筆者を指摘する。各企業が対応するのはもう限界か。
背景に競争激化か
くら寿司の急成長も目覚ましい。くら寿司は15年で4倍の規模になった。スシローと同様に、コロナ禍を跳ね返して売り上げが1.2倍伸びている。これを、くら寿司という単一業態で達成した。ただし、利益は15年前とあまり変わっていない。価格を維持しようと頑張っているが、薄利が進み、なかなかもうけにつながらない様相が見て取れる。
くら寿司の山梨県甲府市内の店舗の店長が4月1日、店舗の駐車場で車内にて焼身自殺した事件は痛ましく、強い抗議の意思を多くの人が感じただろう。『週刊文春』によるスクープは、上司のスーパーバイザーによるパワハラが背景にあったとした。くら寿司側では、個人的事情があると推察されるとして、業務との関連を認めていない。
くら寿司は、一見絶好調に見えて、利益の額が15年前とさほど変わっていない。店舗数が拡大すればするほど、利益率が下がるジレンマで、ついつい上司からの厳し過ぎる指導が行われてしまったのかもしれない。
甲府市内に、くら寿司は甲府上阿原店しかない。この店から車で2〜3分以内に、スシロー、かっぱ寿司、グルメ回転寿司の「活鮮」と、3店もの競合店がある。同一商圏に回転寿司の店舗が集中する、全国有数の激戦地と見受けられた。
これほど厳しい条件下で、突出した業績を上げるのは相当難しい。お店の従業員の証言も『週刊文春』は紹介している。刑事事件として捜査してみないと明確なことは分からないが、過度な期待が店長にかかっていて、心理的に追い込まれていた可能性を否定できない。
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