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そう来たか! クラウンクロスオーバーRS池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

16代目新型クラウンの心臓ともいえるシステムはどのように変わったのか。実際にクロスオーバーRSに乗車してみたところ……。

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16代目クラウンでトヨタが打ち捨てたもの

 筆者は、16代目のクラウンで、トヨタはその矛盾を力業で糊塗するのを止めたと考えている。まず最も記号的なデザインにおける権威主義性を打ち捨てた。強い威圧感のあるラジエターグリルやヘッドランプ、さらにはご老公の印籠のように強調された王冠のエンブレム。そういうものが圧倒的に薄まった。


新型クラウンの4車種。左からクロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート(トヨタ提供 撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

 それをもって「これだったらクラウンを名乗らなくてもいいじゃないか」という声もあるし、その言わんとすることは分かるのだが、現実を直視すれば「フラッグシップたれ!」という世界観ではもう生き残る道はない。

 21世紀に入るころには、既にクラウンユーザーの平均年齢は毎年1歳ずつ上がっていくと言われていて、それを危惧して、走りを徹底的に改めた03年発表の12代目「ゼロクラウン」以降、トヨタは手を変え品を変えてクラウンの権威を守る戦いを続けてきた。


12代目クラウン

 しかしながら、折悪しく全世界的にセダン人気が衰えていく。そしてついに、先代15代目で、クラウンはセダンにとって、極めて重要なリヤシートの居住性の優先順位を下げた。代わりにクーペライクなデザインと、圧倒的なビークルダイナミクスを与えることで新しい価値を創造しようとしたのである。


15代目クラウン

 確かに、先代は走るものとしては素晴らしい出来だったが、いかにせよデザインが中途半端だった。シュッとしていることが求められるクーペライクデザインに、捨てきれなかった権威的意匠。そのミスマッチは極めて残念に見えたし、新時代のフラッグシップにふさわしい鍛え上げた走りは、その代償として価格の高騰を招いた。

 トヨタ内部では、メイングレードで550万円のラインに“死の谷”があると長らく言われてきたそうだが、全面刷新を賭けて、勇気を持ってその谷を超えてみた結果の惨敗だった。

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