ファミレスは危機に陥っている!? サイゼリヤとガストで明暗が分かれたワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
ファミレスの2大巨頭「サイゼリヤ」と「すかいらーくHD」。すかいらーくの主力であるガストが、サイゼと比べて業績面で苦戦している。背景には何が?
顧客がなかなか戻ってこない
同じような低価格のファミレスである。なぜ、サイゼリヤが順調なのに、ガストは顧客がなかなか戻って来ないのだろうか。19〜22年における売上高の推移と、22年1〜10月の既存店売上高(前年同月比)の推移を見てみよう。
22年に入ってからの、既存店売上高の月次推移を見ていくと、全ての月でサイゼリヤの対前年比の伸び率が、すかいらーくのそれを上回っている。しかも、10月こそ、両社の対前年比の伸び率は近接しているが、1〜9月ではサイゼリヤが上回り続けている。
コロナ禍における売り上げの減少も、すかいらーくは19年比に対して20年は77%、サイゼリヤは81%で、すかいらーくのほうが影響が大きかった。
また、すかいらーくの売上高は今年4月以降に回復が本格化してきたのに対して、サイゼリヤは年初より一貫して回復していたという違いがあった。
なぜ追い込まれたのか
それではまず、すかいらーくがなぜ100店の閉店を決断するほど追い込まれたのか。決算書関連資料、月次報告から読み解いていこう。
すかいらーくの店舗数は、19年12月には3258店あったが、21年12月には3098店にまで減った。既にコロナ禍で160店ほどが閉店していた。22年6月、さらに100店の追加閉店が発表されており、コロナの影響で260店前後が閉店することになる。これは19年の店舗数の約8%にあたり、かなりのインパクトがある数値だ。
それではブランドごとに店舗数の推移を見て、どの業態を整理してきたのかを点検してみたい。
こうして見ると、すかいらーくグループでは、コロナ禍において主力とは考えていない、「その他」の業態を最も多く閉店していている。減った店舗数は全部で189店だ。主力業態に注目すると、最も減ったのはジョナサンだ。19年と比べると87店も減ってしまった。これは、約7割の規模に縮小したことを意味する。
次いで、ステーキガストの30店減、ガストの25店減、夢庵の15店減となっていて、ここまでが店舗2桁減のブランドだ。これらは不振組と考えて良いだろう。
ガストは思ったほど店舗数が減っていない。コロナ禍で顧客が激減したのを埋め合わせようと、から揚げ専門店「から好し」の鶏のから揚げメニューを組み込んで、テークアウトやデリバリーの需要を増やすテコ入れを行った。全国のガストをから好し併設店にする改革を行って、なおも店舗を減らさざる得ない苦しさだ。
閉店ラッシュに見舞われているジョナサンとガストに共通しているのは、万遍なくさまざまなメニューがそろったバランス型で、これといって売りになる看板メニューがないことだ。あえていうと、ガストは「チーズINハンバーグ」、ジョナサンは「タンドリーチキン&メキシカンピラフ」や「和風てりたまバーグ」あたりになるのだろう。しかし、いつ行っても値段なりの食事ができる安心感こそが、これらのチェーンの売りだった。
近年はちょい飲みメニューが充実してきて、夜の集客が上がっていた。ガストはグラスワイン219円、レモンサワー、ハイボール、グラスビールが329円と安い。ジョナサンもグラスワイン220円、レモンサワーなどのサワーやハイボールが329円だ。ところが、コロナ禍でお酒を自粛していた時期もあり、すっかり顧客が減ってしまった。
モーニングも、シニア層が外食を避けるようになって、なかなか回復して来ない。テレワークが普及して、家に夫がいるためか、平日のランチにお母さんたちが集まってファミレスでおしゃべりする機会も減っている。休日も小さい子どもが騒ぐと飛沫が飛ぶイメージが人々の頭によぎるのか、積極的に行こうと考える人も以前より少なくなっているかもしれない。
競合する商圏に回転寿司ができるとどうなるか。近年の回転寿司は寿司だけでなく、肉寿司、ラーメン、うどん、スイーツなどメニューが豊富で、コーヒーも飲めてしまう。食べ放題の焼肉も、海鮮、サラダ、ビビンバや冷麺、スイーツまでそろっている。回転寿司や焼肉を食べた後に、ファミレスに移動してお茶というニーズも消失しているので、厳しさが増している。
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