「サクマ式ドロップス」製造元が廃業に追い込まれた、これだけの理由:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
「サクマ式ドロップス」を製造する佐久間製菓が2023年1月に廃業する。廃業の理由として、同社は「コロナ」と「原材料高騰」の2つを挙げているが、本当にそうなのか。筆者は違った見方をしていて……。
苦戦を強いられた背景
こういう血で血を洗うレッドオーシャンは厳しい言い方だが、弱い者から力尽きる。ものを言うのはテレビCMなど宣伝力や、薬局やスーパーの売り場を確保できるのかという「ねじ込む力」だからだ。
実際、同社がかなり苦しい戦いを強いられていたことは、横倉社長のコメントからもうかがえる。新聞記者に健康志向の市場が大にぎわいで、「健康」や「医薬」を掲げた佐久間製菓にとっても飛躍のチャンスではと水を向けられて、社長はこんな愚痴をこぼしている。
「宣伝力では総合菓子メーカーにかなわない。当社のスローガンなどどこかに忘れられてしまいそう」(日経産業新聞 1998年9月1日)
この時期、佐久間製菓は大手油脂メーカーと協力して、ビフィズス菌を閉じ込めたヨーグルトキャンディを開発した。薬剤を患部まで直接送り届けるという医薬品の技術を応用したもので、菓子に応用したのは異例のことだった。
しかし、残念ながら、そんな画期的な技術を応用した「おなかの友だちヨーグルト」は、「サクマ式ドロップス」に代わるような主力商品にはならなかった。
もちろん、その後も佐久間製菓はさまざまなチャレンジを続けた。99年にはこれまでの強みを生かして医薬品部外品の「エチケットロップ」も販売した。
だが、これらの画期的に新製品が現在、販売されていないことからも分かるように、横倉社長がかつて「生き残り」のために目指した、医薬品や健康志向品を新たな成長のエンジンに……というところまではいかなかったようだ。
その厳しい現実をよく示しているのが、同社の公式Webサイトだ。
関連記事
- 「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのか
日本アムウェイ合同会社に対して、消費者庁が勧誘などの一部業務を6カ月間停止する命令を出した。「昔から同じようなことをやっているのに、なぜ今なの?」と思われたかもしれないが、どういった背景があるのか。さまざまな憶測が飛び交っていて……。 - ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 「田園都市線」は多くの人が嫌っているのに、なぜ“ブランド力”を手にできたのか
「通勤地獄。なぜあんなところに住むのか」――。SNS上で「東急田園都市線」が批判されている。街は整備されていて商業施設もたくさんあるのに、なぜこの沿線をディするのか。その背景に迫ったところ……。 - キユーピーの「ゆでたまご」が、なぜ“倍々ゲーム”のように売れているのか
キユーピーが販売している「そのままパクっと食べられる ゆでたまご」が売れている。食べことも、見たことも、聞いたこともない人が多いかもしれないが、データを見る限り、消費者から人気を集めているのだ。なぜ売れているのかというと……。 - イオンの冷食売場で異変 1500品目を陳列して、どうなった?
イオンリテールの新業態「@FROZEN(アットフローズン)」が、盛り上がっているようだ。約1500品目を扱い、日本最大級の品ぞろえを誇る。一番人気は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.