NTT「初任給3万アップ」が、日本の「賃上げ」に繋がらないこれだけの理由:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
NTTが新入社員の初任給をアップする。現在の初任給を見ると、大卒が21万9000円だが、来年4月入社の新入社員は25万円に。3万円もアップするので話題になっているが、このことによって日本企業の賃上げは広がるのだろうか。
「格差」が広がるという指摘
一方、この人事改革によって「格差」が広がるという指摘もある。『〈現行の役職は廃止します〉月21万円の賃金差も…NTTグループ「人事改革」内部資料入手』(文春オンライン 11月10日)によれば、評価グレードの高い社員と、評価が最下位の社員の給与格差は月20万7620円にもなる。つまり、ほんの一握りの「能力が高い人材」にとっては賃上げだが、能力がそこそこの人は実質的に「賃下げ」になるというのだ。
ただ、いずれにしても、このようにNTTが「カネで能力の高い人をつなぎ止める」という方向へ大きく舵(かじ)を切ったことが、日本全体の「賃上げ」につながっていくと見る専門家も少なくない。
ご存じのように、NTTは日本の基幹産業を代表する企業で、その働き方や人事制度、そして給料は多くの大企業のベンチマークとされてきたという事実がある。実際、NTTがジョブ型雇用を導入したところ、それを受けて他の大企業でも今、続々とジョブ型雇用へと舵を切っている。
つまり、NTTが外資系に「能力の高い人材」を奪われないよう、一部の人とはいえ賃上げをしたように、他の大企業もNTTに人材を取られないようにその動きに追随せざるを得なくなる。そういう大企業が増えていけば、全国に広まって、「賃上げドミノ」が起きるのではないか、と一部の有識者が言っているのだ。
ただ、厳しいことを言わせていただくと、それはかなり能天気というか、甘い見通しだ。この先、NTTを「手本」にして大企業の賃上げが進んだところで、日本全体の賃金にはほとんど大きな影響がない。
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