NTT「初任給3万アップ」が、日本の「賃上げ」に繋がらないこれだけの理由:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
NTTが新入社員の初任給をアップする。現在の初任給を見ると、大卒が21万9000円だが、来年4月入社の新入社員は25万円に。3万円もアップするので話題になっているが、このことによって日本企業の賃上げは広がるのだろうか。
「賃上げドミノ」を起こすには
では、「賃上げドミノ」を起こすにはどうすべきか。
消費税をゼロにしろ、大企業からガッツリ税金をとって中小企業にバラ撒(ま)けば解決だ、などいろいろな意見があるだろうが、根本的なところでは、諸外国のように「最低賃金の引き上げ」をしていくしかない。
ご存じのように、中小企業の経営はブラックボックスだ。株を持つオーナー社長が家族を役員にしていることが多く、株主など外部の意見はほとんど反映されない。社員数名という小規模事業者も多いので、労働組合などほとんどない。社員や外部に経営の数字が開示されることも少ない。
こういう「ブラックボックス経営」にいくら税金を投入したところで、経営者が乗り回す高級車に消えたり、家族の役員報酬に消えたりするだけだ。
つまり、消費税をゼロにしようが、中小企業に莫大な補助金を投入したところで、そこで働く日本の7割の労働者にはほとんど「還元」されないということなのだ。
だからこそ「最低賃金の引き上げ」という“外圧”が必要だ。
法的に賃金のボトムラインを引き上げると、どんなブラックボックス経営でも賃上げせざるを得ない。あらゆる企業が対象なので、賃上げを価格に反映しやすい。賃上げすると潰れてしまう企業もあるだろうが、そこは新規事業や成長を目指して企業努力をしていくしかない。
世界の中小企業は、みんなそうやって成長している。そして、成長ができない中小企業は「なんとか労働者を安くこき使って延命しよう」ということにはならず、事業を畳むか、競争力のある企業への事業を売却・譲渡していく。そうして、経済というのは新陳代謝していくものなのだ。
というと、「数だけを見て本質的なところが分かっていない! 中小企業は大企業の下請けとして搾取されているので、その構造を変えないで最低賃金の引き上げなどをしても倒産企業を増やすだけだ」という反論もあるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「サクマ式ドロップス」製造元が廃業に追い込まれた、これだけの理由
「サクマ式ドロップス」を製造する佐久間製菓が2023年1月に廃業する。廃業の理由として、同社は「コロナ」と「原材料高騰」の2つを挙げているが、本当にそうなのか。筆者は違った見方をしていて……。
「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのか
日本アムウェイ合同会社に対して、消費者庁が勧誘などの一部業務を6カ月間停止する命令を出した。「昔から同じようなことをやっているのに、なぜ今なの?」と思われたかもしれないが、どういった背景があるのか。さまざまな憶測が飛び交っていて……。
ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。
「田園都市線」は多くの人が嫌っているのに、なぜ“ブランド力”を手にできたのか
「通勤地獄。なぜあんなところに住むのか」――。SNS上で「東急田園都市線」が批判されている。街は整備されていて商業施設もたくさんあるのに、なぜこの沿線をディするのか。その背景に迫ったところ……。
キユーピーの「ゆでたまご」が、なぜ“倍々ゲーム”のように売れているのか
キユーピーが販売している「そのままパクっと食べられる ゆでたまご」が売れている。食べことも、見たことも、聞いたこともない人が多いかもしれないが、データを見る限り、消費者から人気を集めているのだ。なぜ売れているのかというと……。


