日本のカー・オブ・ザ・イヤーは“2つ”ある 「今年のクルマ」から見えるそれぞれの違いとは?:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(4/4 ページ)
日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考の結果が12月8日に発表されます。一方、11月9日にはRJCカーオブザイヤーの最終選考が行われました。「おかしいな」と思った方もいるでしょう。「11月9日に最終選考があったのに、12月8日にも結果発表をするとは、どういうこと?」と。
「カー・オブ・ザ・イヤー」というお墨付き
カー・オブ・ザ・イヤーの獲得は、自動車メーカーにとって商品に箔がつくことを意味します。専門家が「今年一番のクルマだ」と認めるわけですから、賞を獲得した自動車メーカーは、誇らしげに広告やCMに賞の獲得を明記するようになります。そして、ユーザーも、それを見て「専門家のお墨付き」であることを理解し、購買意欲を高めることになるというわけです。
ですから、自動車メーカーは、賞の獲得に向けて、選考員会向けの追加の試乗会を開催しています。もちろん通常の試乗会でも、選考員を確実に呼びます。逆に言えば、選考員は必ず、候補に挙がったクルマを試乗していることが求められるのです。
こうした自動車メーカーの賞獲得に向けた動きがあれば、どのクルマが賞を獲得するのかは、事前になんとなくわかってしまうものと思うかもしれません。しかし、実際のところ、RJCカーオブザイヤーはまだ小さなクルマが強いという傾向はありますが、日本カー・オブ・ザ・イヤーの予測は非常に困難である、というのが個人的な実感です。
なぜなら、選考員は、みな自動車メディアで働く人間ですが、それぞれ評価基準や好みが異なっているのです。製品としての出来を重視する人もいれば、売れ行きを重視する人、社会的な意味を最優先に考える人もいます。そのため投票結果としては、まったくのバラバラ。最終選考では、選考員1人ずつの投票内容が公開されますが、その内容にはいつも驚かされてばかりです。
あえて言えば、どのようなクルマが選ばれるのか、その選考こそが世相を反映しているということでしょう。選考員も日本の空気の中で生活していますから、当然、その判断にも世相の影響があるはず。12月8日になれば、日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考も発表されます。今年のグランプリに、どんなクルマが選ばれるのかに注目です。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
関連記事
- 新型「プリウス」世界初公開 豊田社長とケンカしても、開発陣が譲らなかったことは?
トヨタは11月16日、新型「プリウス」を世界初公開した。1997年の誕生から25年間、ラテン語の「開拓者」に由来するその名の通り、新世代のエコカーとしてHEVの普及を牽引したプリウス。 - 「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」10ベストカーが発表 最終選考は12月8日
一般社団法人日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会は11月4日、「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の第一次選考において、全48台のノミネート車から最終選考会に進む「10ベストカー」を発表した。 - 信号機のない横断歩道で一時停止しない都道府県 3位「京都府」、2位「和歌山県」、1位は?
JAFは、「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2022年調査)」を実施した。信号機が設置されていない横断歩道を歩行者が渡ろうとしている場面で、一時停止した車は39.8%(3003台)程度だった。 - 高級車の魅力度ランキング 「BMW」「ベンツ」を抑えた1位は?
J.D. パワー ジャパンは、「J.D. パワー 2022年 日本自動車商品魅力度調査」の結果を発表した。「ブランドランキング」の総合1位は「レクサス」だった。 - LEXUS、バッテリーEV「UX300e」の一部改良を発表 電池容量を72.8kWhに増強
LEXUSは10月12日、ブランド初のバッテリーEVの市販モデル「UX300e」の一部改良を発表した。日本での発売は、23年春頃を予定している。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.