ロイホのパンケーキが「テレビ番組の酷評」で、再ブレイクしそうなワケ:スピン経済の歩き方(6/7 ページ)
ロイヤルホストのパンケーキがテレビ番組で酷評され、ネット上でちょっとした騒ぎになっている。ファンの間からは怒りの声が多く寄せられているが、筆者の窪田氏はそれほどカッカする話ではなという。どういう意味かというと……。
パンケーキの味を変えられない事情
それから1980年にグランドメニューになり、84年には「ディモズパンケーキ」となった。これは、米国の外食業界で第一線として活躍したのち、80年から同社の顧問を務めていたスタン・ディモズ氏が焼き方を伝授したからだ。江頭氏はこのディモンズ式パンケーキの味にほれ込んでていたという。
『創業者の故江頭匡一氏にとっても、このパンケーキは思い入れのあるメニューの1つであったようで、当時の社内報にはパンケーキを例に「ロイヤルの哲学」を解説する原稿が掲載されている』(日本食糧新聞 2009年8月3日)
これを踏まえて、もし皆さんがロイヤルホストの社員だったとして、「注文も減ってきましたからサクッとパンケーキ変えちゃいましょうよ」などと提案できるだろうか。そんなことを言い出したら、社内はかなり重苦しい空気になるのではないか。
江頭氏は2005年に亡くなっているが、経営陣や幹部社員の多くは江頭氏の下で働いていた人たちだ。ロイヤルホストとはなんぞや、という精神を江頭氏から叩き込まれたベテラン調理人もたくさんいる。彼らにとって、パンケーキは「江頭イズム」を具現化した一品なのだ。
ここまで「思い入れ」が強くなった定番商品を簡単にいじることはできない、というのは容易に想像できよう。だから評価と注文数のギャップが問題になっても、レシピの改良ではなく、「食べ放題」というアイデアで乗り切ろうしたのではないか。
そんな「聖域」が、今回の「ジョブチューン」では全否定された。一流料理人はそんなロイホ社内の「思い入れ」は知らないので、多種多様なパンケーキがあふれている現実を踏まえて、「すごくケミカルな味」「古い形にこだわりすぎ」「家でも焼けるんじゃないか」などと感じたことをズバズバと言ってしまった。
だから、創業者の思いを知る人々は社長を筆頭にショックを受けたのではないか。しかし、それは裏を返せば、これはロイホが新しいステージに上がるチャンスでもある。
ロイヤルホストの「社内の論理」に任せていたら、いつまで経ってもパンケーキという「聖域」に手を突っ込むことはできない。社内で決定権を持つ人、影響力の強い人ほど、創業者の思いをよく理解しているので腰が引けてしまうのだ。
しかし、今回、番組でボロカスに叩かれることで、「ついにこの聖域も改革せざるを得ない」という理由ができた。「外圧」によって「聖域なき改革」に動き出すことができたのだ。
これまで取材やコンサルで多くの企業を見てきた経験から言わせていただくと、こういう決断ができるようになった老舗企業は強くなる。創業者の「個人商店」から、「第二の創業期」ともいう成長に入るからだ。
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