高齢者にとって「住み心地」のよい場所はどこか 6つの条件:「つくる」という発想(1/3 ページ)
「住み慣れたところで暮らしたい」と考えている高齢者も多いかもしれないが、本当にそれでいいのだろうか。高齢者にとって住み心地がよい場所……。
著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)
1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。
京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)
「人生の最後は、住み慣れた場所で」という願いは、多くの高齢者に共通しています。加齢による体の不調はあるにせよ、いや、あるからこそストレスを感じない場所で、穏やかに暮らしたいと思うのは当然ですし、「リロケーション・ダメージ」(高齢になってから環境を変えることによって生じる心身の不調)と呼ばれる現象も昔から指摘されています。
高齢の親を案じる子どもが、自分たちとの同居や近居を勧めても、頑として今の自宅から動かないという話はよくありますが、これも、環境を変えることへの不安が親御さんにあるからでしょう。
だからといって、「高齢者は長く暮らしてきた場所に住み続けるべきだ」と簡単に結論づけることはできません。環境も本人も変化していくからです。便利な暮らしに欠かせないスーパーや病院、金融機関の有無、周りに住んでいる人の数や年代、地域の人間関係の質・量など、環境は必ず変化していきます。
また、家の中の小さな段差や部屋の温度差、周囲の坂道や階段、利便施設への距離などは、若い頃は全く気にならなかったとしても、年を取ると危険や不便を感じるようになってきます。転居によるリロケーション・ダメージも危ないですが、「住み慣れた場所」にも大いにリスクがあるということです。
そのような危険な要素がある「住み慣れた場所」で暮らしていて、自宅での事故や急病への対処が遅れたり、閉じこもり生活によって衰えが進んでしまったりした結果、老人介護施設などに入らざるを得ず、次にそこでの慣れない生活でリロケーション・ダメージを受けてしまう場合も少なくありません。ダメージをダブルで受けるようなもので、最も避けたいケースです。
「住み慣れた場所」という言葉には、「最近まで住んでいた居住年数が長い所」といった意味合い以外に、「住み心地がよい」というニュアンスが含まれています。だから、「なぜ、わざわざ住み替えないといけないのか」という反論に使われるわけですが、長年、住んできたからといって、住み心地がいいとは限りません。住んでいる間に、その環境は不便や不安、危険を含むものに変化していきますし、近年では、防災や防犯も高齢者の心配事になっているからです。
関連記事
- ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.