2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

高齢者にとって「住み心地」のよい場所はどこか 6つの条件「つくる」という発想(1/3 ページ)

「住み慣れたところで暮らしたい」と考えている高齢者も多いかもしれないが、本当にそれでいいのだろうか。高齢者にとって住み心地がよい場所……。

Share
Tweet
LINE
Hatena
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

 組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)

 1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。

 京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)


 「人生の最後は、住み慣れた場所で」という願いは、多くの高齢者に共通しています。加齢による体の不調はあるにせよ、いや、あるからこそストレスを感じない場所で、穏やかに暮らしたいと思うのは当然ですし、「リロケーション・ダメージ」(高齢になってから環境を変えることによって生じる心身の不調)と呼ばれる現象も昔から指摘されています。

 高齢の親を案じる子どもが、自分たちとの同居や近居を勧めても、頑として今の自宅から動かないという話はよくありますが、これも、環境を変えることへの不安が親御さんにあるからでしょう。

 だからといって、「高齢者は長く暮らしてきた場所に住み続けるべきだ」と簡単に結論づけることはできません。環境も本人も変化していくからです。便利な暮らしに欠かせないスーパーや病院、金融機関の有無、周りに住んでいる人の数や年代、地域の人間関係の質・量など、環境は必ず変化していきます。

 また、家の中の小さな段差や部屋の温度差、周囲の坂道や階段、利便施設への距離などは、若い頃は全く気にならなかったとしても、年を取ると危険や不便を感じるようになってきます。転居によるリロケーション・ダメージも危ないですが、「住み慣れた場所」にも大いにリスクがあるということです。

 そのような危険な要素がある「住み慣れた場所」で暮らしていて、自宅での事故や急病への対処が遅れたり、閉じこもり生活によって衰えが進んでしまったりした結果、老人介護施設などに入らざるを得ず、次にそこでの慣れない生活でリロケーション・ダメージを受けてしまう場合も少なくありません。ダメージをダブルで受けるようなもので、最も避けたいケースです。

 「住み慣れた場所」という言葉には、「最近まで住んでいた居住年数が長い所」といった意味合い以外に、「住み心地がよい」というニュアンスが含まれています。だから、「なぜ、わざわざ住み替えないといけないのか」という反論に使われるわけですが、長年、住んできたからといって、住み心地がいいとは限りません。住んでいる間に、その環境は不便や不安、危険を含むものに変化していきますし、近年では、防災や防犯も高齢者の心配事になっているからです。

       | 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.

ページトップに戻る