なぜ、「AOKI」がひとり勝ち? 会社を救った大ヒット商品と、紳士服以外の事業:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)
紳士服4大チェーンで、「AOKI」を展開するAOKIホールディングスが復活を果たしつつある。競合他社は苦戦しているのになぜなのか? 背景を探っていくと……。
青山商事の多角化
一方、業界首位の青山商事は、22年3月期こそ売上高1660億円(前年同期比2.8%増)、経常利益52億円(前年は114億円の損失)、最終利益14億円(前年は389億円の損失)と、いったんはコロナを克服して黒字転換を果たした。
ところが、23年3月期中間決算では、売上高768億円(前年同期比14.4%増)、経常損失4億円(前年は62億円の損失)、最終損失25億円(前年は76億円の損失)と、売り上げは上がっているが赤字に戻ってしまった(損失額はかなり改善している)。
22年9月末の同社の中核、ビジネスウェア事業の店舗数は国内759店。そのうち「洋服の青山」が699店、「THE SUIT COMPANY」が45店となっている。19年3月末には891店、そのうち洋服の青山が809店、THE SUIT COMPANYが60店あった。
コロナ禍で約130店も大量閉店。その影響の大きさがうかがえる。
なぜ、再び赤字になったのか。決算書によれば、中核のビジネスウェア事業が売上高490億円(前年同期比20.1%増)と伸びたが、セグメント損失34億円に終わったのが響いた。
同社も行動制限緩和による需要の回復が追い風となって、メンズスーツ、フォーマルウェアが好調に売れた。しかし、20年9月期に売上高が前年同期比45.6%減と、半減近くとなった傷は激烈だ。元の売り上げにはほど遠い現状で、強力なヒット商品がほしいところだ。
今冬は、洋服の青山から、温度・湿度を自動調節する機能を備えた、オリジナルの吸湿速乾素材「コントロールα」を使用した、ステンカラーコートとフーデッドコートを発売。また、オフィスの節電対策に対応した、20秒で衣服内を暖めるカーボンヒーター(モバイルバッテリー付き)を内蔵したハイネックベスト、「暖ONベスト」という着るコタツのような新商品も販売している。機能からの差別化でヒットを狙う。
また、9月には「スーツの青山」から「ビジネスウェアの青山」に向けて本格始動。ビジカジの新ブランドとして、メンズは「アクティビズ」、レディスはリブランドした「アンカーウーマン」を投入した。アクティビズはビジネスの新しいスタンダードを目指し、セットアップスーツ、ジャケット、スラックス、シャツ、ニット、カットソーなどをラインアップ。トレンドを意識したややゆとりのあるシルエットで、リラックス感ある着心地を追求している。
青山の本業、紳士服を中心としたビジネスウェアの売り上げ比率は、年商の3分の2ほどで、残りの3分の1は他の事業で稼いでいる。
年商100億円程度の事業が幾つかある。22年3月期で、100円ショップ「ダイソー」の雑貨販売事業は160億円、15年に完全子会社化した総合リペアサービス事業の「ミスターミニット」は102億円、物語コーポレーションの「焼肉きんぐ」や「ゆず庵」といった飲食店FCなどを経営するフランチャイジー事業は110億円といったところが、目を引くところだ。
店舗数は、雑貨販売114店(22年2月末)、総合リペアサービス278店(国内・22年3月末)、FCは「焼肉きんぐ」39店・「ゆず庵」13店(22年3月末)などとなっている。
しかし、AOKIの多角化に比べれば、紳士服への比重が高過ぎる点で差がついた。
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