JR東日本が「年間3000億円」の借金返済に追われるワケ 「不採算線区の廃止」やむなしの苦しい現状:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(4/6 ページ)
コロナ禍に大きな悪影響を受けた業界は数多いですが、その中の一つが移動・交通関連の業界です。今回は、東日本旅客鉄道を取り上げます。
業績が悪い事業は?
続いて各事業の業績を見てみると、コロナ以前と比べて特に業績悪化が続くのは主力の運輸事業となっていて、こちらの営業利益の水準を見てみるとコロナ以前である19年3月期の2241億円に対して、直近23年3月期の第2四半期が173億円です。鉄道の利用減が業績に大きな悪影響を与えていることが分かります。
鉄道事業は乗客数によって大きく業績が左右されます。基本的にはダイヤ通りに決められた区間を運行するため、走行距離は一定です。乗客が0人だろうと1万人だろうと、運行のコストは大きくは変わりません。
コストが大きく変わらない一方で、売り上げは乗客数×客単価で決まるため、乗客数が増えれば増えただけ売り上げが増えていきます。当然利益増も乗客数に左右されるため、乗客数の減少は業績に大きな悪影響をもたらします。このためコロナ禍で利用者数が低調な中、大きな業績悪化が続いています。
ではコロナ以前の19年3月期と比べて運輸収入はどの程度の回復状況なのかというと、第2四半期時点で在来線は76.3%、新幹線では64%と、どちらも7割前後の回復です。また、今後は23年3月末時点で在来線が95%、新幹線が90%まで回復する見通しを立てています。
近隣への外出需要はだいぶ回復が見られる上、新幹線でもビジネスシーンではオンライン会議などが一般化する影響はあるものの、最近では全国旅行支援などの後押しもあり移動需要は増加しています。回復はさらに進むという見通しのようです。
とはいえ、こうした想定通りの回復や、コロナ以前の水準までのさらなる回復が進むかというと、不透明な部分が大きいのが実情です。
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