「161億円」のプレッシャー “ハードルの高い事業計画”でも、freee東後氏が諦めずにいられたワケ:対談企画「CFOの意思」(1/2 ページ)
「CFOの意思」第7回の対談相手は、freeeの東後澄人氏。「SaaS企業の宿命」である強いプレッシャーがありながらも、上場前には5年間にわたって目標未達の時期が続いたという。それでも諦めずに壁を越えられたのはなぜなのか?
連載:対談企画「CFOの意思」
ベンチャーの成長のカギを握る存在、CFO(最高財務責任者)。この連載では、上場後のスタートアップの資金調達や成長支援を行うグロース・キャピタルの嶺井政人CEOが、現在活躍するCFOと対談。キャリアの壁の乗り越え方や、CFOに求められることを探る。
「CFOの意思」第7回の対談相手は、freeeの東後澄人氏。創業間もないfreeeにCOOとして参画し、CFOを経て現在はCPO(Chief Product Officer)を務める。
freeeのようなSaaS企業は、評価され続けないと成長投資を継続できない。そんな宿命に強いプレッシャーを感じながらも、上場前には5年間にわたって目標未達の時期が続いたという。それでも諦めずに壁を越えられたのはなぜなのか?
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「成長が急務」のプレッシャー SaaS企業の宿命
嶺井: COO時代やCFO時代に乗り越えなければいけない壁はありましたか? どのように越えられたでしょうか。
東後: 壁しかなかったですね。例えば、COO時代に営業組織を立ち上げたときのこと。当時のfreeeはエンジニアが中心の会社ですから、「良いプロダクトを作ってさえいれば、営業はいらない」という考えがあったんです。
営業があることで、届けたいお客さんに、きちんと価値が届くということをデータで示すコミュニケーションを取りました。新しい機能を持った組織を増やしながら、一体感を作っていくのに苦労しましたね。
最もハードルが高く、「しんどいな」と思ったのは、事業目標を達成することでした。当時、1年に1回以上のペースで資金調達を繰り返しており、それを積極的に成長投資に充てて急成長させることで前のラウンドよりも高いバリュエーションを実現する、ということを早いサイクルで行っていました。そのため、必然的に毎回アグレッシブな事業計画を立てていたんです。
おかげさまで、社外の方々からも高い期待値をもっていただけて、資金調達に成功していたのですが、そのアグレッシブすぎる事業計画に届かないという状態がCOOの5年間続きまして……。
未来に向けて、新しい取り組みをしなければいけない、だけど足元の数字もしっかりと積み上げなければいけない。そこからくる辛さと大変さがずっとありました。
ただ、振り返ってみると、アグレッシブな事業計画に意識を引っ張り上げてもらえたからこそ高い成長を続けられたのではないかなと思うんです。もし、「これでいいよ」と、低い目標値を設定していたら、成長が緩やかになったのではないでしょうか。もっとも、今だからこそ客観的に見られていますが、渦中にいた当事者としてはしんどかったんですけど(笑)。
嶺井: しかも、その目標は自分たちで設定していますしね。言い訳ができない(笑)。
「SaaSの成長はレイヤーの積み重ね」
嶺井: 18年には当時未上場での資金調達が累計161億円に達したと発表されていました。評価され続けないと成長投資を継続できないため、常にプレッシャーかかるというのは、SaaS企業の宿命ですよね。
毎回、その目標値に届かなくてしんどいと思っていても、諦めずに壁を超えられたのはなぜでしょうか。
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