「上司よ、もっと叱ってくれないか」 若者は本当にそんなことを考えているのか:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
残業がなかったり、上司から叱られなったりする企業に対して、多くの若者たちが「ぬるい」と不満を感じているという。「ホワイトすぎる企業」に勤めている若者たちは、「社会人として成長できない」と危機感を抱いているらしいが、本当にそうなのか。
ホワイト企業だろうが、ブラック企業だろうが
だから、このニュースを鵜呑(うの)みにして、「ホワイトすぎるのもよくないんだな」なんて勘違いしないほうがいいのだ。そもそも冷静に考えれば、「ホワイト企業だから成長できない」なんて主張はかなり自分勝手だ。
上司が叱らなくても、定時で退社できる会社であろうとも、上昇志向を持っている若者というのは自分のスキルを上げるためにさまざまな努力をする。「ホワイトすぎる企業」で働きながら、ビジネススクールなどで学んだり、資格の取得をしたりする人もいるだろう。
そういう若者は、ホワイト企業だろうが、ブラック企業だろうが、ほどなくして辞めて新しいキャリアへと進んでいく。会社が悪い、上司がよくない、と愚痴る前に、自分の実力をつけるために「行動」に移るものだ。
厳しい言い方だが、ホワイト企業に勤めながら「ゆるい」「もっと叱って」と文句を言うような若者は、会社にしがみつく気満々のような気がしてしまう。「ゆるい」と感じるのならばハードな職場へ転職をすればいいだけの話だし、もっと叱ってほしいのなら、仕事が終わった後に、厳しく自分を追い込む環境などいくらでもある。
会社に一度入ってしまえば、黙っていれば全て会社が面倒を見て、自分を強く鍛えてくれる――。そんな「甘え」を感じてしまうのは筆者だけだろうか。
ただ、若者たちがこのように勘違いをしてしまうのはしょうがない。海外では会社に入社することは、自分のキャリアアップの「手段」に過ぎない。だから、賃金や仕事内容などで自分に得がなければ離職するのは当たり前だ。
しかし、日本では会社に入社することは、自分自身のキャリアアップうんぬんより、「正社員」という安定した立場で長く居座り続けることが最大の目的だ。
そのため、若者側も会社への依存心が強い。右も左も分からなくても毎日マジメに出勤しているだけで、一人前の社会人に育ててくれる「学校」のような場所だと勘違いしている。そして、問題は、会社側もそう思ってしまっていることだ。
だから、若者が離職をする原因を必死で追い求めるという異常なことをする。海外の多くの国では、若者が会社を辞める理由などいちいち深く考察しない。「よりよい仕事が見つかったんでしょ」の一言で終了だ。
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