年金運用に暗雲? 22年上半期で5.4兆円の含み損 引き金となった28年ぶりの“事件”とは:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)
政治に経済に、さまざまなニュースが駆け巡った2022年。中でも注目は、機関投資家に打撃を与え、年金運用にも大きな影響をもたらした28年ぶりの“事件”といえるだろう。
通常、株式と債券の値動きは逆相関となる。利上げによって低リスク資産である国債の利回りが魅力的なものとなれば、株式でわざわざリスクを取らなくても安定した運用益が計上できることが理由である。
ここで読者に問いたい。現在、米国の政策金利は直近で4%となっているが、もし自身がファンドの運用担当者であったとして、元本が保証された上で4%の利回りを確保できる米国債と、期待年率リターンが5%である日本株のインデックス投信であれば、どちらに投資したいと考えるだろうか。多くの方が「1%の差のために、わざわざ元本保証の固定利回りを放棄したくない」と考えたのではないだろうか。
つまり、中央銀行が利上げすると債券の価格が下がり、低リスクで確保できる利回りが増加するため、リスク資産の株式は相対的に魅力がなくなる。このように、利上げによって株価下落と債券価格の上昇がもたらされる――というのが教科書的な説明だ。
しかし、22年はそのような教科書通りの動きが発生しなかった。足元では国債と株式が同時に売られており、国債の価格が下落して利回りが上昇しても、債券に買いが積極的に入らなくなっているのだ。
その最も大きな要因は、見通しの難しい世界的な高インフレの継続だろう。中央銀行が政策金利を引き上げると債券の利回りが上昇し、価格が下落するのが一般的だ。足元における利上げは、コロナ禍における金融緩和などで発生した高インフレに対するもので、今後も利上げが行われる可能性は高い局面にあるといえる。
債券の価格は政策金利によってある程度コントロールができる要素だ。今後も利上げが継続すれば、債券の価格は引き続き下落を招くことから、投資家心理としては「今の下がった価格で債券に買いを入れなくても、今後さらに利上げによって債券価格が下落し、利回りが上昇する」という目算となる。このようなメカニズムで、22年は異例の株式と債券の同時安が発生したのだ。
「巨額損失」の心配は不要?
足元の市場環境を踏まえると、今後発表される年金や公的資金のファンドは、債券と株式の同時安によって「大きな損失が出ている」というセンセーショナルな情報拡散が行われる可能性が高い。
しかし実のところ、債券における評価損はあまり心配する必要はなく、中長期的には損失がカバーされるようにできている。GPIFによれば、同法人における満期保有目的の債券は「償却原価法」で処理されている。これは、現在の評価額と満期時の評価額の差分を満期までの期間に応じて按分(あんぶん)する方式だ。では、なぜこれが損失のカバーにつながるのだろうか。
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