2022年のファッション業界振り返り 専門家が注目する「3つのキーワード」とは?:磯部孝のアパレル最前線(1/4 ページ)
1年を表す漢字に「戦」が選ばれた2022年。ファッション業界では、どんなことが起こったのか。専門家が3つのキーワードを軸に解説する。
日本漢字能力検定協会が毎年発表している「今年の漢字」に、2022年は「戦」が選ばれた。ロシアによるウクライナ侵攻が世界中に衝撃を与えた他、国内では安倍元総理の襲撃事件など、ショッキングな出来事も多い1年だったといえるだろう。こうして世相を振り返えれば数多の大きな出来事に囲まれた22年。その中でも今回は、ファッション業界に起こったビジネス・トピックスについて取り上げてみたい。
相次いだ「値上げ」
原材料費、燃料費や物流費の高騰、止まらぬ円安も重なり、多くの業界を「値上げ」が襲った。ファッション業界も値上げが相次いだ。ユナイテッドアローズは22年春夏商品から、しまむらやユニクロも22年秋冬などで値上げに踏み切った。当初は「値上げはしない」と宣言していたワークマンも、23年春夏から展開商品の改廃を進め、価格の見直しを検討している。
ポリエステルやナイロンといった合繊素材の原料となる原油の価格は、ロシアのウクライナ侵攻もあり、高止まり。綿花はここに来て景気後退の高まりと在庫拡大によって下落したのだが、輸送費や工場人件費などは上がっている。きわめつけは為替レートで、22年1月4日の始値は1ドル115.33円だったのが、12月23日の終値時点で132.54円と、15%ほども円安が進行している。
店頭での値上げ告知にもさまざまなタイプがあった。例えば、ひたすら申し訳ないと繰り返し客に理解を求める「平身低頭型」。その他、諸式高騰の背景を縷々(るる)説明し、ウクライナ情勢などにも触れて本題に入る「説得型」。新旧の価格を大書して理屈は申さぬ「告知型」。そうかと思えば「経費削減の健闘むなしく……」と悲壮な雰囲気の「哀願型」もある。
とはいえ、今のところ値上げによる大幅な客離れや売上不振といった声が聞こえてこないのは、より上質な原料への置き換えや、機能を新たに加えた値上げ商品が、「付加価値アップ」として許容されていることなどが考えられよう。絶え間ない企業努力の継続が引き続き望まれるところだ。
大型M&Aも話題に
M&Aとは、Mergers(合併) & Acquisitions(買収)を略した呼称だが、企業の合併と買収だけでなく、提携まで含め広義にわたる。ながらくデフレ成長が続いた日本企業の価値は、大きく円安に動いたこともあって、外国系投資ファンドが参入しやすい水準になった。その結果、22年もファッション業界を巡るM&Aが話題になった。
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