元市議・市長に聞く 「子育て支援」ばかりアピールする自治体を手放しに称賛できないワケ:これからの自治体に求められる視点とは?(2/4 ページ)
住民サービスの違いで、自治体の明暗が分かれる時代になっている。街選びの視線が年々厳しくなる中で、選ばれる街になるにはどうすればいいのか。元川崎市議の小田理恵子氏と和光市長を3期務めた松本武洋氏に聞いた。
「和光市では私の前の市長2人が医療、スポーツそれぞれを重視した施策を合計20年ほど続けており、その一方で都市計画の停滞が見られました。首長が自分なりのカラーを出すのは政治家として大事なことですが、それが偏り過ぎるのは問題です。
例えば、道路整備のような街の基盤整備は時間もかかり、用地買収その他で敵を作ることもあります。でも、街の将来を考えると、批判にある程度鈍感になって整備を進めないと、街は住みやすくなりませんし、価値も上がらない。住民の耳に優しい施策だけでは街は作れないのです」
松本氏は、子育て支援で話題になった明石市の出身だ。明石市の人口増、子育て世代からの人気が、市長の施策だけではなく、歴史的経緯の結果であるかもしれない可能性を指摘する。
「明石市中央部にあるJR山陽線 大久保駅周辺では、工場の移転に伴い、宅地化が進んでいました。08年に公立高校の学力低下の要因の一つとされた総合選抜が廃止され、大学進学実績が上向いてきたことなども背景にあるのかもしれません」
短期間で成果が上がった施策にだけ注目するのではなく、首長が“街の経営者”としてバランスのとれた感覚のある人物かどうかを見る方が、長く住む街を選ぶためには大事というわけだ。
自治体の「経営感覚」を測るポイント
首長の経営感覚を見るためには、決算や議事録などを他自治体、経年で比較しながら見るのが良いと小田氏。ただ、残念ながら自治体のこうした数値は、デジタルデータ化されていないケースも多い。一つの自治体の10年の推移ですら比べて見られないことがある。また、会計処理の費目が経年で変化していることもある。
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