会社の初詣は「宗教の自由」の侵害? どんな場合にアウトになるのか:Q&A 社労士に聞く、現場のギモン(1/2 ページ)
【Q】社長の提案で、全社員で初詣に行くことになりました。問題ないのでしょうか?
連載:Q&A 社労士に聞く、現場のギモン
働き方に対する現場の疑問を、社労士がQ&A形式で回答します。
Q: 当社では、仕事始めの日に社員が連れ立って初詣に行く習慣があります。従業員数は20人にも満たない規模なので、これまでは部署ごとに希望者が休憩時間に近くの神社に行っていましたが、今年から社長の発案で「業務時間内でいいから、せっかくなら全社員で行こう」という話になりました。
業務時間内に全社で初詣をすることは、問題ないでしょうか? また、信教の自由の関係などから問題は発生するでしょうか?
「信教の自由」の観点から、アウトになるケースは?
新しい年の始まりに際し、社員が一堂に介して同じ行事に取り組むということは、日本型雇用慣行では比較的よく見られた光景だと思います。ただし、業務時間内に行事を実施する際には、労働基準法など法律との兼ね合いが必要になる場合があります。
労働基準法第3条では「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定められています。また、憲法第20条2項では「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」とされています。
ご質問のように、会社が通常の所定労働時間内に社員全員に対して初詣の参加を求めることは、一種の業務命令に当たります。この場合、業務命令は労働条件の範囲内で適用されるべきであり、社員の人権や信教の自由を侵害するような内容は適切ではありません。
初詣は年の始まりに感謝の意を表したり、新年の無事や平安を神社や寺院に祈願するといった宗教的要素が濃い行事とされています。ただ、実際には初詣に行く全員が強い信念を持って参加しているかといえばそうとも言えず、季節的イベントの一つとして、必ずしも信念とは関係なく初詣をしている人が少なからずいるのが実態ではないでしょうか。
とはいえ、初詣は神社や寺院といった宗教的施設への参拝になるため、参加を希望しない社員を強制的に参加させることは「信教の自由」を定めた憲法20条2項に違反することになります。また、所定労働時間内に参加を命じた場合には、業務命令としてその内容が妥当であるか否かの正当性も問われることになります。
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