値上げしたスシロー、値上げしなかったサイゼリヤ…… 話題のトピックから見えた外食産業の苦悩と未来:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
2022年の外食産業で話題になった出来事を振り返る。コロナ禍から復活しつつあるが業界が抱える“苦悩”も見えてきた。今後の動向は?
値上げをしないサイゼリヤ
サイゼリヤは値上げをしないが、22年12月13日に、スパゲティの大盛とお子様サイズを廃止する奇策に出た。サイズを1つに統一した方が、オペレーションが楽。調理の品質も安定する。コスト的にも、サイズを調整する手間が省けて削減になる。
逆に、値下げをアピールする企業も出てきた。22年10月1日、「やっぱりステーキ」を経営するディーズプランニング(那覇市)では、150グラムで1400円していたメイン商品のミスジの部位を使った「やっぱりステーキ」を1200円に値下げした。サラダ、スープ、ライス食べ放題付き。他のサイズも、応分に値下げしている。
米国産の牛肉価格高騰につき、150グラムのやっぱりステーキを21年9月には1000円から1200円に、22年2月には1400円に値上げしていた。しかし、米国の仕入先との交渉により安価な牛肉を大量に仕入れることが可能になり、値下げを実現した。
やっぱりステーキは21年9月には75店舗だったが、現状90店ほどに拡大しており、好調を維持している。
また、ワタミの「焼肉の和民」では、22年3月29日より、焼肉全品を429円で提供する、均一価格を導入した。“焼肉界の鳥貴族”を目指す方向に転換。カルビ、ロース、ハラミ、レバーなどの人気商品が、量を変えずに、よりリーズナブルに食べられるようにした。看板の「ワタミカルビ」は値段が変わらず、量が75グラムから90グラムに増えた。
サラダ、生キムチ、石焼ビビンパ、ユッケジャンクッパ、冷麺などのサイドメニューも429円。集客増を狙った。顧客単価を3300円から2500円に2割以上引き下げて、ゴールデンウイーク期間中に客数が2倍になる大きな効果があった。
23年は、もう少し円高に振れる可能性はあるが、ロシア・ウクライナ戦争が終結する見込みはない。従って、エネルギーと食料の逼迫は続き、外食はさらなる値上げを余儀なくされると予想する。
どこまでの値上げが消費者に受け入れられるか。外食を控える動きが広がるかもしれない。
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