やはり「酔えるグミ」は無責任なのか UHA味覚糖が間違えたこと:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
UHA味覚糖のソフトキャンディー「パリピ気分」が、SNSで叩かれている。「お酒」をコンセプトにしていて、アルコール分が2.0%入っていることから、批判が噴出しているのだ。アルコールが含まれているお菓子は他にもあるのに、なぜパリピ気分は炎上したのか。
ビジネス的においしくない
さて、こういうアルコールを取り巻く国内外のリスク環境を踏まえて、UHA味覚糖の「パリピ気分」について考えていこう。確かにアルコールが入ったソフトキャンディはこれまでなかったし、「パリピ」というコンセプトや、楽しげなパッケージも若者向けでバズりそうなのでヒットの予感もする。マーケティングや営業も大賛成でゴーを出したかもしれない。
が、筆者のような企業の危機管理を専門とする人間からすれば、これは完全にアウトだ。
先ほども申し上げたように、WHOはアルコールをタバコの次の規制ターゲットと見ている。それはつまり、これからアルコールの入った商品は、タバコと同じような叩かれ方をするということだ。そこでアルコールを扱う企業が最も神経を払わないといけないのは、「パッケージ表記」や「イメージ訴求」である。
ご存じのように今、タバコには「あなたの健康を損なう恐れがあります」という警告表示が義務づけられている。海外では文字だけではなく、真っ黒になった歯や肺の写真などが大きく掲載されており、日本でも導入すべきだという意見が多い。
また、未成年者に「タバコってかっこいいな」と思わせるようなイメージ訴求も禁止されている。今、50代くらいの人は覚えているだろうが、昔はタバコのおしゃれなCMがよく流れていた。三浦友和さん、高倉健さん、鹿賀丈史さんなど「かっこいい大人の男」が登場するタバコCMに影響されて、「なんかかっこいい」と当時の中高生はタバコを吸った。これがWHOの世界戦略で禁止されたのだ。
つまり、タバコでは規制されている「パッケージ表記」や「イメージ訴求」は遅かれ早かれ、アルコールでも規制されていく可能性が高いのである。
こういうリスクのトレンドを理解している企業は、「アルコール入ってるのでほろ酔い気分、イエー、パリピ最高!」なんてコンセプトの菓子は恐ろしくてつくれない。WHOとつながっている厚生労働省、そこに連なる依存症の専門家、アルコール問題に取り組む医師などから間違いなくクレームが入るからだ。
それを突っぱねてもいいことはない。先ほども申し上げた通り、アルコールの有害な摂取は、日本政府も推進するSDGsにも含まれており、タバコ規制を日本にのませたWHOも絡んでいる。ケンカをするには相手が悪すぎる。
商品の回収などをしないにしても、広報対応や謝罪コメントの発信、取引先への説明まわり、さらにパッケージの変更などがあれば、余計なコストがかさんでしまう。つまり、ビジネス的にもちっともおいしくないのだ。
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