増えるのは給料だけなのか? ユニクロ「年収最大4割増」「初任給30万」を素直に喜べないワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/4 ページ)
物価上昇、実質賃金の目減りなどが深刻化する中、ユニクロなどを運営するファーストリテイリングが、大幅な賃上げを発表して話題となった。足元では大企業のボーナス伸び率が過去最大となるなど、格差社会の深刻化を感じさせるニュースが増えている。さらには差別的なネットミームも流行しているようで……。
5年前の17年8月期におけるファーストリテイリングの従業員構成を確認したい。当時の決算資料によれば、同社の従業員数は「社員」が4万4424人で、準社員・アルバイトが3万1719人であった。全体に占める社員以外の比率は41.6%である。
では、直近の従業員の状況はどうだろうか。22年8月期の従業員は、「常勤雇用者」が5万7576人、パート・アルバイトなどが5万6113人となっており、常勤雇用者以外の比率は49.3%まで増加している。
とりわけ、国内ユニクロ事業における社員以外の準社員・アルバイトといった人員の伸びが著しい。17年度には社員が1万3026人、社員以外が1万1949人であったのが、足元では常勤雇用者1万2698人、常勤雇用者以外が2万5261人と、伸び率に違いがあることが分かるだろう。
今回対象外となった従業員についても今後賃上げを実施する想定であることや、非正社員などについても21年の段階で賃上げを実施している点を踏まえると、全体としてファーストリテイリングの姿勢は評価すべきであるといえる。
しかし、今後は大企業に対する法人税の増税や、不確実性の高い経済状況も待ち構えている。健全な賃上げには業績の確かな成長が必須だが、物価高といったコスト面を理由として無謀な賃上げ基調が醸成されれば、「正社員を賃上げする代わりに、正社員の人数を減らしたり、非正規雇用化したりして帳尻を合わせる」といった事態も増えてくる可能性がある。
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