ドンキの「光るスピーカー」はなぜ売れているのか “青い光”が見えてきた:水曜日に「へえ」な話(2/4 ページ)
ドン・キホーテで販売している「光るスピーカー」が売れている。最大の特徴は、なんといってもピカピカと「光る」こと。「音楽を聴くのに、照明なんていらないでしょ」と思われたかもしれないが、ターゲットにはササっているようで……。
ターゲットは「マイルドパリピ」
マイルドヤンキーという言葉を定義したのは、かつて博報堂でマーケティングなどを担当していた原田曜平さんである。地元志向が強く、内向的で、上昇志向が低い――。そんな彼ら・彼女らが好む場所は、地元のショッピングセンター、コンビニの駐車場、そしてドンキなどと指摘した。
ただ、新型コロナの感染が広がって、小川さんは次のように分析した。「『外』への意識が減って、『内』向きになっているのではないか」と。時間的な余裕ができたことから、閉塞感が生まれてきた。しかし、それを打破するために、仲間内で盛り上がりたいというマイルドヤンキーが増えているのではないかと推測したのだ。
このような話をすると、「ははーん、分かったぞ。光るスピーカーのターゲットはマイルドヤンキーでしょ。ピカピカするモノが好きそうだしな」と想像されたかもしれないが、半分正解といったところ。小川さんは、そこに「パリピ」という言葉を掛け合わせたのだ。ご存じの人も多いと思うが、パリピとはパーティーやイベントが好きな人たちのことである。
コロナ禍になって、密を避ける行動をしなければいけなくなった。しかし、たまには仲間だけで盛り上がりたい。そんなときに、イルミネーションがピカピカ光るスピーカーがあれば、盛り上がるのではないか。マイルドヤンキーとパリピを掛け合わせて、商品のターゲットを「マイルドパリピ」と定義したのだ。
キャッチーなネーミングをつけたわけだが、なんとなく思いついたわけではない。小川さんは、野村総合研究所が発表したデータに注目した。家庭の収入はどうなると思いますか? という質問に対し、「悪くなる」と答えた人を見ると、2015年は30%、18年は24%まで減少していたが、21年には33%に。
また「生活に満足している」と答えたのは、21年で78%。この数値は、調査を始めてから最も高い。さらに、商品を購入する際に「ピンとくる」というノリで決める感覚消費派が増えていることもうかがえた。
このデータを受けて、小川さんは次のような仮説を立てた。「新型コロナの感染が広がって、多くの人が家の中などで自粛を余儀なくされた。時間的な余裕が生まれた中で、充実感を見出そうとしている人が増えているのでは」と。であれば、“クラブごっこ”ができるスピーカーがウケるのではないかと考えて、開発を進めていったのだ。もちろん、マイルドパリピに向けて、である。
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