「冷蔵庫に紙を貼らないで」 岩手・北上市の“常識”を変えるプロジェクト:保育園をDXで(3/5 ページ)
岩手県北上市の「保育園DX」プロジェクト。連絡帳などをデジタル化したが、その効果は業務効率化にとどまらない。現場の意識改革や市の他部門への広がりにもつながっている。民間出身のDX推進リーダーは、子育て世代から“常識”を変えていくことが狙いだと話す。
デジタル化をきっかけに「意識」が変化
ルクミ―の導入は、22年夏から段階的に実施。施設によって規模や地域性が異なるため、登降園の打刻ができる機能から利用を始めて、徐々に連絡帳やおたよりの機能も追加していった。現在では7施設全てで連絡帳やおたよりを完全にデジタル化している。
実際にルクミ―を利用している職員や保護者の反応はどうか。当初から、職員に対しては、システム導入による煩雑さを可能な限り軽減するため、各園の園長と職員が参加するグループチャットを作成。そこで相談や苦情などを受け付けたり、ルクミ―の紹介動画や説明書を共有したりすることで、現場との意思疎通を図っている。
質問や相談にチャットですぐに応じられるようにしたことで、「園で撮影した動画を保護者と共有できないか」「スマートフォンの音声入力を使ってみてもいいか」などといった相談を気軽にしてもらえているという。また、おたより機能を工夫して使う方法を紹介するなど、改善アイデアの共有の場にもなっている。
さらに、保護者の反応も職員のモチベーション向上につながっているようだ。保護者からは「紙を探さなくてよくなって便利」「欠席連絡の電話が不要になった」「連絡帳に写真を付けてくれるのがうれしい」などと好意的な反応が寄せられた。そういった声を受けて、職員も写真を添付する機会を増やしたり、子どもたちの様子がうまく伝わる写真を撮影しようと工夫したりしているという。
「アプリを通じた動画や写真の共有は保護者に好評で、現場の保育士さんたちも『どう伝えるか』を意識してくれるようになっています」(大塚氏)。デジタル化をきっかけに、それまでは出てこなかった改善や工夫について、現場から自然にアイデアや意見が出てくるようになった。そんな意識改革は大きな成果となっている。
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