男性でも「化粧ポーチ」「レディースコート」 ジェンダーフリーファッションが拡大する背景:着こなす事例が増えている(1/4 ページ)
ジェンダーフリーファッションがじわじわと広がっている。背景には何があるのか。アパレル業界のコンサルティングを30年以上続けてきた筆者が分析する。
洋服のトレンドが大きく変わっています。アパレル業界のコンサルティングを30年以上やり続けてきましたが、今が一番の変革期だと思います。
ファッションは時代を映す鏡で、特に若者のトレンドを見ると時代の流れがつかめます。私が注目しているのがファッションのジェンダーフリー化です。男女の区別がない洋服もでてきていますが、女性がメンズファッションを、男性がレディースファッションを着こなす事例も増えてきました。さらにそれは他のアイテムにまで拡大し始めています。
なぜ今ジェンダーフリーなのか。ジェンダーフリーで登場した新しいファッションにはどのようなものがあるのか。消費トレンドを追いかけ、小売り・サービス業のコンサルティングを30年以上続けてきたムガマエ株式会社代表の岩崎剛幸が分析していきます。
男性がレディースファッションを着る時代
都内で地下鉄に乗っていた時のことです。私の斜め前に10代後半から20代前半の若い男性が立っていました。今どきのイケメンで細身の若者でした。私は仕事柄、街中を歩く人のファッションを見ることが多いのですが、この男性はかなりおしゃれなファッションスタイルでした。
特に着ていたコート。それはレディースのコートでした。もちろん、男性だと思っていたその人は女性だったかもしれないし、生まれもった性は女性で、特定の性別を自認しないXジェンダー(FtX)の方だったかもしれません。しかし、男性的な顔立ちで身に着けているもの全てがメンズライクなのですが、コートは確実にレディースコートだったので気になりました。洋服は男女の体型にあわせて仕立てられています。それがメンズコートかレディースかは見たら分かります。
レディースコートを上手に着こなす若者がでてきたことに私は驚きました。ファッションブランドのデザイナーさんや美容師さん、タレントさんなど、本当に一部の男性だけに見られた傾向だったからです。背景には「サイズが合わなかった」ことがあります。
レディースアイテムは色もデザインも豊富。ディテールに凝っていて、色柄のパターンも多彩。そのため、レディースの洋服を着たいと思っていた隠れレディースファッション好き男性も結構いたのではないかと思います。
しかし、胸やお尻など肉体的な特徴が異なることが多いため、レディースファッションはそもそも男性の身体で着こなせなかったのです。
それが最近では、サッカー日本代表選手のような細マッチョのクール男子が増えました。BTSのような着こなしができる若者も多くなっています。だから、レディースファッションをカッコよく着こなせる男子が増えたのでしょう。
フリマアプリである楽天「ラクマ」が2021年12月に発表した調査結果があります。直近1年間で「レディースファッション」カテゴリーのアイテムを購入した、10〜20代の男性ユーザー780人を対象にアンケートを実施したものです。
同調査によると、10〜20代のレディースファッションカテゴリーにおける購入取引で、男性客の利用比率が年々拡大しています。17年11月と21年11月の単月比較では、男性の購入率が3.9%から8.5%となっています。4年間で4.6ポイント上昇しています。
同調査の概要をまとめると、以下のようになります。
(1):初めてレディースファッションを購入した場所は「ブランドの店頭」が約3割、「フリマアプリ」は約2割
(2):レディースファッションのアイテムを着る理由は「デザインが好きだから」が約5割
(3):レディース、メンズにこだわらず、「ファッションは、自分らしく自由に楽しみたい」と思う人が9割以上
(4):「自分の美意識が高い」と思う人は約7割
(5):美意識が高い理由は「好きな音楽、アーティストに影響を受けたから」が約4割
(6):好きな音楽ジャンルはJ-POP、ROCK、HIP-HOP。特に好きなアーティストは「BTS」「UVERworld」
やはり今の男性は、韓国系アーティストの影響を受け、美意識に目覚めています。自分らしさや自由を求めた結果、デザインの豊富なレディースファッションに行き着いたようです。これが男性がレディースファッションを着るようになった一番の理由です。
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