男性でも「化粧ポーチ」「レディースコート」 ジェンダーフリーファッションが拡大する背景:着こなす事例が増えている(2/4 ページ)
ジェンダーフリーファッションがじわじわと広がっている。背景には何があるのか。アパレル業界のコンサルティングを30年以上続けてきた筆者が分析する。
女性が男性用アイテムを着用する
女性はどうでしょうか。女性がメンズファッションを着るというのは実は以前からありました。それがここ数年、ダラッとしたシルエットがトレンドだったこともあり、女性がメンズファッションを着る機会はさらに増えました。店頭で自分用に購入している姿もよく見かけます。
一方、これまではあまり見られなかったのに、最近では当たり前になったスタイルもあります。それは「リュック」です。1990年代前半まではリュックを「オタク」のシンボルと捉える人も多く、女性はハンドバッグがメインでした。
その後、トートバッグが女性の間で流行。男性もおしゃれな人は、手提げタイプからトートバッグへと切り替えていきました。しかし、片方の肩だけに荷重のかかるトートバッグには、長時間使うのが難しいというデメリットがありました。その後、ビジネスパーソンの間ではリュックが主流になっていきました。
デサントが車以外で通勤する男性(20〜44歳で)を対象に実施した通勤時におけるビジネスバッグ使用状況や、リュックタイプに対する意識調査があります。
同調査によると、20〜30代男性のうち6割がリュックを使っています。40代でも5割の人がリュックを使うようになっているそうです。大型雑貨店ロフトのビジネスバッグ売り場では9割がリュック、ハンズでもビジネスバッグ売り場の6割はリュックに変わっているケースもあります。
この流れが今では女性にも広がってきています。きっかけとなったのは「アネロ」という開口部が口金タイプのリュックです。15〜17年に販売数500万個という大ヒットを記録しており、日本のキャロットカンパニーという会社が手掛けています。同社の売上高は15年度44億円、16年度88億円(前年比200%)、17年度118億円(同134%)と急成長を続けました。特に香港や台湾などのアジアで大流行し、一時は女性の背負うリュックの大半はアネロというほど人気がでました。
このブランドの出現によって、女性の間でリュックを背負うことの抵抗感がなくなりました。同時に、さまざまなリュックのアイテムが登場するようになり、女性の間でリュック人気が定着しました。一度リュックを背負ったら、女性も「両手がふさがらなくて便利」となったのでしょう。
バッグメーカー大手「エース」の調査では、21年の女性用ビジネスリュックの売り上げが17年比で8倍に増えています。
22年の売り上げも21年の7割増です。ただし、現在の女性のリュック使用率は女性全体の9%程度。まだ認知され始めた段階ですので、これからさらに伸びていくと思われます。
リュックというアイテムは、もともと男性が持つとか女性が持つというような性別で分かれるアイテムではありません。その意味ではリュックはジェンダーフリーなアイテムの代表格として再認識され、女性に広がっていったといえるかもしれません。リュックの広がりを見ると、ファッションアイテムとはそもそもジェンダーフリーなものだともいえるような気がします。
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