いくら「お願い」してもニッポンの賃金は上がらない──その3つの原因とは:働き方の「今」を知る(1/5 ページ)
岸田首相は1月4日の年頭会見で「賃上げを何としても実現する」と宣言した。しかし、いくら「お願い」してもニッポンの賃金は上がらない。筆者が解説する、日本の賃金が上がらない3つの原因とは?
2023年は年初早々より、「賃上げ」にまつわる報道が話題になっている。
家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる消費者物価指数(生鮮食品を除く)において、22年12月は、前年同月比で4.0%上昇したと報道された。この「上昇率4.0%」という数字は、第2次オイルショックの影響が続いていた1981年12月以来、実に41年ぶりの高水準である。
主な要因は食料品や電気代、ガス代などの値上がりであり、SNS上では市販食品の価格はそのままでも内容量が減った「ステルス値上げ」や、高額な電気代明細を嘆く投稿などを目にする機会が増え、読者の皆さまにおいても、着実なインフレを実感されている方が多いかもしれない。
実際、2022年10月には大手飲料メーカーや回転すしチェーンなどで一斉に値上げが実施されたばかりだが、早くも本年2月には、加工食品や調味料など総計4200品目以上の食料品において、平均18%もの値上げが予定されている。家計へのインパクトも大きい。
「お願い」では、賃金は上がらない
このような状況を受けてか、岸田首相は1月4日の年頭会見で「賃上げを何としても実現する」と力強く宣言した。筆者もどのような政策を実現するのかと一瞬期待したのだが、その内容が「経済界に対し、ことしの春闘で物価上昇率を超える賃上げ実現への協力を求める」という、単なる「企業へのお願い」にしかすぎなかったことを知り、大いに落胆した次第であった。
なぜなら、民間企業がいくら賃上げしたくとも、それを妨げる政策上のボトルネックが多々存在し、それらを解消できるか否かは政府の決断次第だからだ。こと賃上げに関しては、国が率先して動かないことには解決困難な課題が多々存在する。政府は賃上げの「協力依頼」などをしている場合ではなく、ぜひ「企業が心置きなく賃上げできる環境整備」にこそ力を注いでもらいたいのだ。
帝国データバンクの調査(22年9月、有効回答数約1万2000社)によると、「人手不足」と回答した企業の割合は正社員で約5割、非正社員で約3割を記録。いずれもコロナ禍後最大の数値であり、インバウンドの増加や東京五輪関連の建設工事などで人手不足感が強まっていた18年頃に迫る水準となっている。経済活動がようやく復調しようとしているタイミングであるにもかかわらず、働き手が足りなければチャンスを逃してしまいかねない。
「人手不足なら、給料を上げればいいのに」「バブル崩壊以降ずっと景気が悪かったから、賃金を上げられなかっただけでしょ」──とお考えになるのが自然であろうが、残念ながら実態はそうなっていないことは、読者の皆さまもよくよくご存じのことだろう。
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