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グーグル・メタを差し置いて、アマゾンの広告事業が伸び続ける3つの理由 石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(4/4 ページ)

米国のテック業界で不景気が続いている。グーグルやメタの広告収入が大きく減少している中、アマゾンの広告事業は前年同期比19%増と好調だ。なぜ、アマゾンの広告事業は伸び続けるのか、その裏側とは──?

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(3)アマゾンが広告商品を多く表示させている

 グーグル検索結果の上位がほとんど広告で埋め尽くされているという問題は数年前から指摘されていますが、実はアマゾンでも同じことが言われています。アマゾンで商品を検索すると、結果の上位はほとんどがスポンサードと書かれている広告商品の場合も多く、「アマゾンでは基本的に全てが広告になっている〜アマゾン・プライムよりもうかる裏ビジネスの内幕」という記事が出るほどです。


アマゾンで検索すると、上位のほどんどが「スポンサード商品」の場合も多い(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 アマゾンの直近の四半期では、販売された全商品の58%がサードパーティーセラーからの商品で、アマゾンにとって非常に重要な位置付けだと言えます。

 サードパーティーセラーは、アマゾンの「マーケットプレイス」を通じて商品を販売する中小企業を中心とする数十万のオンライン販売業者を指します。このサードパーティーセラーが自社商品をより頻繁に、より良い場所に表示させ成功するためには、売り上げの10%から20%をアマゾン広告に費やさないといけないと、上記記事で明かされています。とはいえ、アマゾンマーケットプレイスの成長により、例え広告費を払ってでも自社商品をトップに表示させたいと考えるセラーが増えているのです。

 また、グーグル検索が広告で埋め尽くされると、どのWebサイトが一番信頼できるか分からない可能性もありますが、アマゾンの場合、スポンサー商品だとしても、星の数とレビューの数という過去の消費者の生の声があることで、ユーザーもさほどスポンサー商品かスポンサー商品でないかは気にならない可能性もあるでしょう。

 このように、アマゾンの広告ビジネスはアマゾン全体で見ればまだ小さい事業ですが、成長率には特筆すべきものがあり、マーケットプレイスとの強い親和性があることも分かります。

 顧客中心主義を唱えてきたアマゾンが、広告商品ばかりを表示させることでユーザー体験がどう変化するかは考慮すべき点ですが、今後も変化し続けるインターネット広告市場に引き続き注目したいと思います。

著者プロフィール:石角友愛(いしずみ・ともえ) 

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パロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナー

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。また、毎日新聞「石角友愛のシリコンバレー通信」、ITメディア「石角友愛とめぐる、米国リテール最前線」など大手メディアでの寄稿連載を多く持ち、最新のIT業界に関する情報を発信している。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
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