串カツ田中の「恫喝」問題 なぜ現場はマニュアルを軽視するのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
串カツチェーンを展開している「串カツ田中」が揺れている。串カツ田中を1カ月で退職した新人が流したと思われる「告発文書」が、ネット上で拡散しているのだ。どういう内容なのかというと……。
「マニュアル否定」のカルチャー
居酒屋やレストランなどのチェーンでバイトをした経験のある人ならば一度や二度は、働いているときに先輩などから、「マニュアルでは一応こう書かれているけれど、店では誰もやってないよ」という「裏ワザ」を教えてもらったことがあるはずだ。
マニュアルを守りたくないわけではない。客を効率的にさばくため、現場をうまくまわすために、その店独自に編み出された「現場ルール」である。
特に居酒屋の場合、客は画一的な対応ではなく「個性」を求めるので、マニュアルをあえて否定したほうが客から支持されるケースもある。分かりやすいのは、「塚田農場」だ。数年前にブームというほど急成長を遂げたとき、塚田農場にはマニュアルというものが存在しなかった。あえてつくらなかった。
『社員同士のつながりが強く、先輩の動きを見て、その技術を盗む。背中で教える徒弟制度のような世界観だった。スタッフはそれを誇りに思い、社内では「教えない教育」という言葉がよく聞かれた。マニュアルがないからこそ、「チェーン店らしくない雰囲気」が生まれ、来店客に特別感を与えた。スタッフや店舗同士の間で工夫や競争を促し、ベンチャー企業らしい急成長を支えた』(日経ビジネス 22年11月22日)
この「マニュアル否定」のカルチャーは、同じく「個性的なチェーン居酒屋」として急成長してきた串カツ田中にもしっかりと根付いている。
公式Webサイトには、「ベテラン店長の仕事の流儀』として、「串カツ田中の中でも社歴が長く、串カツ田中の成長を支えてきた縁の下の力持ちの一人」だという店長のインタビューページがあって、こんなことをおっしゃっているのだ。(参照リンク)
『串カツ田中のいいところは「個性を出して働けること」なんです。マニュアルはもちろんありますけど、「これを一字一句言え!」とかは、ない』
また、公式Webサイトの「求人情報」には、実際に各店舗で働くスタッフのコメントが掲載されている。その中で、「キッチンスタッフ」の男性もこのように言っている。(参照リンク)
『僕が「串カツ田中」の求人でアルバイトをはじめたのは、自由な雰囲気のお店で仕事をしたいと思ったからです。前職でも居酒屋でアルバイトをしていましたが、すべてマニュアルが決まっていたので仕事に息苦しさを感じていたんです…… 串カツ田中のアルバイトは、自分の個性や得意分野を活かして仕事ができるので、とても楽しいですね』
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