世界で「最低賃金1500円」は当たり前なのに、なぜ日本人は冷ややかなのか:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
Twitterで「最低賃金を全国一律1500円に」がトレンドに入った。世界に比べて日本の賃金は低いのに、なぜ「給与アップ」の話は盛り上がらないのか。その背景に何があるのかというと……。
地方が衰退するのは「自業自得」
いろいろなご意見があるだろうが、特定の政治イデオロギーの人たちが叫んでいるので、政権批判のために叫んでいるスローガンだと誤解されてしまったのではないか。つまり、「最低賃金を全国一律1500円に」というのは実現が難しい理想論だと捉えられてしまっているのだ。
ただ、それは大きな誤解だ。「最低賃金を全国一律1500円に」というのは世界的に見れば、しごくまっとうな要求で、多くの国の人からすれば「なぜ日本人はそんな当たり前のことを叫んでいるの?」と首を傾げるような話なのだ。
ご存じの方も多いだろうが、世界では最低賃金「全国一律」がスタンダードだ。小西美術工藝社社長、デービッド・アトキンソン氏の以下の記事によれば、国土が広い米国、ロシア、ブラジル以外で「地域別」を導入しているのは日本だけだ。
『最低賃金を絶対「全国一律」にすべき根本理由』(東洋経済オンライン 19年2月8日)
これは当然で交通が発達した現代で、都市部と地方で最低賃金に差ができると、安い賃金で働く可能性が高い若者や女性は続々と地方を捨てる。つまり、「宮崎は853円で東京は1072円」という最低賃金格差の大きなこの国で地方が衰退しているのは、「自業自得」でもあるのだ。
また「最低賃金1500円」も、すぐに実現できるかどうかはさておき、掲げる目標としてはそれほど荒唐無稽ではない。
なぜかというと、日本以外の先進国の最低賃金はとっくに1500円以上になっているからだ。といっても、これはよく日本で言われるように「経営者が自主的に賃上げできるような環境整備をすべき」なんてことをしたわけではない。消費税をゼロにしたわけでもない。また、政府が中小企業に「お願いだから賃上げして」と頼み込んで“賃上げ協力金”をバラ撒(ま)いたわけでもない。
ごくシンプルに、政府が物価上昇に合わせて最低賃金を継続的に引き上げたからだ。『「賃上げの予定なし」7割の衝撃 中小企業で働く人は「安月給」のままなのか』の中でも詳しく解説したが、世界では中央政府などが「経済政策」として最低賃金を大胆に引き上げていくのが常識だ。
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