世界で「最低賃金1500円」は当たり前なのに、なぜ日本人は冷ややかなのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
Twitterで「最低賃金を全国一律1500円に」がトレンドに入った。世界に比べて日本の賃金は低いのに、なぜ「給与アップ」の話は盛り上がらないのか。その背景に何があるのかというと……。
「最低賃金引き上げ」の抵抗勢力
こういう話を聞くと「やれデフレだ」「やれ税金が高い」「やれ大企業と中小企業の格差がどうした」などと、みなわれ先にと「賃金が低い理由」を一生懸命に探す。が、諸外国がみんなやっている「最低賃金の引き上げ」をしていないのだから、まずはここに原因があると考えるべきではないのか。
当たり前のことには何も手をつけていないのに、「消費税ガー」「大企業の搾取ガー」というのはあまりに話が飛躍しすぎだ。
しかも、『「中小企業は大企業に搾取されている」という説は、本当か』の中でも詳しく解説したが、中小企業全体で「大企業の下請け」はわずか5%程度に過ぎない。「大企業が札束で頬を叩いて、町工場の優れた技術を盗む」という定番ストーリーでお馴染みの「製造業」で限ってみても17.4%しかない。この程度の搾取構造で、日本全体の賃金が上がらないのなら、この先100年経っても日本の賃金は上がらない。
このようにさまざまなデータを見れば見るほど、「最低賃金を全国一律1500円」がまっとうな政策なのだが、それほど盛り上がらない。この先も春闘や選挙の前は共産党や労組が声高に叫ぶだけで、Twitterでトレンド入りして終わりだろう。
なぜそんな悲観的なことを言うのかというと、「最低賃金引き上げ」の最大の抵抗勢力である、中小企業の経営者団体「日本商工会議所」が、自民党の有力支持団体だからだ。
ご存じのように、商工会議所は全国にあって地域に根ざした活動をしている。それはつまり、ここの機嫌を損ねたら落選する自民党議員が続出し、再び野党へ転落してしまう恐れもあるということだ。
このように生殺与奪権を握られているので、自民党政権は諸外国の政府のように「最低賃金の引き上げ」ができない。岸田文雄首相も年頭、日本商工会議所の小林健会頭に「ぜひ賃上げをお願いします」なんて握手をしていた。
世界では最低賃金の引き上げは、国民の生活を見ながら政府が主導していくものと相場が決まっているが、日本では政治家と業界団体が「まあ、そこをなんとか」「いやいや、どうですかな」なんて談合をしながら、阿吽(あうん)の呼吸で進めていく「政治案件」なのだ。
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