「売り上げを2倍にせよ」 上司の“ムチャぶり”に応えるために、まずやるべきこと:小さく分けて考える(2/2 ページ)
「売り上げを2倍にせよ」――上司からこうオーダーを受けたら、あなたならどうしますか? 一見すると無理難題でも、小さく分けて考えるとヒントが見えてくる……。
こんなときはまず、目標を「分解」するのです。このケースでしたら、まず、「売り上げ」を分解します。売り上げは、「客数×客単価」に分解できます。ここまでは誰でも分かりますね。
では、「客数」を作るための手間を分解してみましょうか。セールス担当者は1つの売り上げを作るために、見込み客のリストを作って、その中からお客さんにアポをとり、提案をして、決まった金額で受注してもらうための働きかけを行っていることになります。
従って、
「見込み客数×アポの率(%)×提案率(%)×受注率(%)」×「客単価」
となります。
何を2倍にするとラク?
では、ここまで分解したところで何を2倍にするとラクに売り上げを2倍にできるでしょうか? かけ算で分解しているので、何かを2倍にすれば売り上げも2倍になりますよね。
ここで「取りあえず、見込み客を2倍に増やさなければならない」と考えると苦しくなります。見込み客のリストを2倍にして、アポを2倍、提案数も2倍にしようとすれば、確実に労力が増えます。今いるセールス担当者ではとても対応できないということになり、人を増やす必要に迫られます。人をたくさん採用すると、当然人件費もかさみますから、売り上げを2倍にできたとしても利益は下がります。
つまり、最初に活動量を2倍にしようと考えると、非常にハードな道のりが待っているわけです。
しかし、受注率や客単価といった数字を上げると考えたらどうでしょうか。提案数が同じでも、受注率が2倍、あるいは単価が2倍になれば、売り上げは単純に2倍になります。もしくは、かけ算で全てつながっているので、受注率1.5倍、客単価1.5倍でもよいでしょう。
これなら担当者は現状の人員のままで売り上げを2倍にできる可能性があります。つまり、本当にやるべきは提案の質を上げて受注率を2倍にするか単価を2倍にすることであり、そのための障壁となっている問題を取り除けばよかったのです。
今の話は、実際に僕のクライアントの企業で起こった話です。「人を増やさなければいけない」「別のメディアを作ろう」と迷われていた経営者に、これまでのような話をお伝えしたところ、「なるほど、それならうちにもできそうだ」と思っていただくことができました。
結果として、客単価は3倍、受注率は1.5倍に拡大し、3年前と比較して広告チームの売り上げは4.5倍になっています。しかも、セールス担当者は全く増えていません。
大きな目的を達成しようとするときに、何か新たなことをはじめようとする会社も多いですが、何でもかんでも新しく取り入れて頑張るのではなく、今行っていることの中から阻害する要因を取り除く。その方が、無理せずうまくいくことも多いのです。
分解思考のメリットの一つは、「これなら無理なく問題解決ができそう」と思える解決策が見つかるところにもあります。
筆者プロフィール:菅原 健一(すがわら けんいち)
株式会社Moonshot 代表取締役 CEO。企業の10倍成長のためのアドバイザー。社会や企業内に存在する「難しい問題を解く」専門家。クライアント10社、エンジェル投資先20社の計30社のプロジェクトを並行して進める。過去に取締役CMOで参画した企業をKDDI子会社へ売却しそのまま経営継続し売り上げを数百億規模へ成長。スマートニュースを経て現職。 20代のマーケター600人が参加する #20代マーケピザ 主催。
関連記事
- なか卯が今でも「250円の朝食」を提供している理由 ライバルは牛丼チェーンではなかった
なか卯は、業界でも屈指のリーズナブルな朝食メニューを提供している。物価高騰が叫ばれる中で、なぜ低価格を維持しているのか。その理由を担当者に聞いた。 - 「想定以上の売り上げ」──期間限定47%増量商品、品切れ相次ぐ なぜローソンは値下げを選ばなかったのか
ローソンが価格据え置きで人気商品の重量を47%増量した期間限定キャンペーン「盛りすぎ!チャレンジ」を開始し、その取り組みが注目を集めている。キャンペーン開始以降の販売も好調で、一部商品で品切れが相次ぐほどだ。 - コメダは「ボリュームありすぎ」だからいい 4人家族がたどり着いた朝食の“最適解”
大手喫茶チェーン「コメダ珈琲店」はボリュームの多さが特徴。4人家族で朝食をとるのには最適な場所だという。その理由は? - 「580円の朝焼肉」誰が食べている? 焼肉ライクが開店を“4時間”早めてまで始めたワケ
焼肉ライクは「朝焼肉セット」という朝食メニューを2020年8月から展開している。コロナ禍で時短営業を余儀なくされ、「朝の時間帯」に活路を見出したのがきっかけ。今はどのように利用されているのか取材した。 - 脱「1皿100円」で沈むスシロー、くら寿司 値上げが受け入れられない根本原因
くら寿司が2022年10月期決算を発表し、2期連続の営業赤字となった。回転寿司業界では値上げが進み、「1皿100円」時代が終焉を迎えようとしている。一方で、値上げは反発を招くもの。どうすればいいのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.