「物価の優等生」は死語に!? エッグショック後も、価格が高止まりしそうな理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)
卵の価格が高騰している。鳥インフルエンザやロシア・ウクライナ戦争の影響だが、エッグショック後も価格が高止まりしそうな理由とは?
高病原性鳥インフルエンザが猛威をふるっている。卵を出荷できなくなる生産者が続出し、品不足が深刻化。卵の価格が高騰して、「エッグショック」と呼ばれる事態となっている。
JA全農たまご(東京都新宿区)が公開している相場情報によれば、東京の卸売Mサイズ基準値は1キロあたり340円となり、過去最高レベルだ(3月10日午前9時時点)。2022年の同日は190円だったから、1年でおよそ1.8倍も高くなっている。
スーパーなどでは、卵の価格が22年より約2倍になっている感があるが、それは卸売価格の高騰が反映されているからだ。これまで「物価の優等生」と呼ばれてきた卵が、かつてない高値になって家計を直撃している。夕刻には早々と品切れになっている店舗も散見されるようになった。
飲食店、食品メーカーなどで使われる業務用の卵不足はより深刻だ。国策により、業務用よりも一般小売向けの卵を優先して流通させているからだ。
帝国データバンクが外食主要100社を調査したところ、23年になってから卵メニューの休止・休売に踏み切ったのは、18社に上ることが判明した(3月5日時点)。
同社によれば、「卵とじやタルタルソースなど鶏卵加工品を使用するメニューでも影響が大きく、生卵のセルフサービスについて個数制限を行うケースもみられた」としている。
また、鶏肉の価格も21年から「ミートショック」と呼ばれてきた牛肉ほどではないが上がっている。
2月の東京の卸売もも正肉加重平均価格は、1キロあたり800円。22年2月は646円だったので、2割ほど上がっている。
また、むね正肉は2月で414円。22年2月は322円だったから、3割弱上がっている。
鶏肉の場合は、おおむね22年より2〜3割値段が上がっているが、供給不足といった声は聞こえて来ない。同じニワトリでも、卵と鶏肉では事情が異なっている。
厚生労働省の発表によると、今秋冬シーズンは過去最速となる22年10月28日に高病原性鳥インフルエンザの国内1例目が確認された。それ以来、23道県56事例が発生し、約998万羽が殺処分対象となっている(1月9日午前10時時点)。これまでの最悪の発生件数であった20年度シーズンを上回り、殺処分対象羽数を更新している。
外食や総菜・弁当などを販売する店では、卵を使ったメニューを休止せざるを得ない事態に追い込まれている。
卵は長らく物価の優等生といわれてきた。しかし、ロシア・ウクライナ戦争の影響で、ニワトリの餌の原料となるトウモロコシなど穀類の価格が上昇。両国は欧州の穀倉地帯であった。輸送のためのガソリン価格も上昇しており、コスト高のために値上げを余儀なくされている。
そうしたコスト高に加えて、高病原性鳥インフルエンザがかつてない規模で大流行してしまった。
現状の対策では、感染したニワトリが飼われている鶏舎を特定し、感染していないニワトリも含めて殺処分し、それ以上の感染を抑えるしか手だてがない。
養鶏農家では、ニワトリが感染しないように衛生面で細心の注意を払っているが、どこからともなく鶏舎に忍び込む、目に見えない微細なウイルスに苦戦している。
「エッグショック」の現状はどうなっており、影響はどの程度続くのか。
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