「物価の優等生」は死語に!? エッグショック後も、価格が高止まりしそうな理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
卵の価格が高騰している。鳥インフルエンザやロシア・ウクライナ戦争の影響だが、エッグショック後も価格が高止まりしそうな理由とは?
卵不足の影響は約半年続く?
有力な流通関係者に取材したところ、匿名を条件に現況を次のように語った。
ニワトリは、大きく分けて卵を生産するための採卵鶏と、肉用のブロイラーなど肉養鶏に分かれる。採卵鶏は1億3000万羽ほどが全国で飼われているといわれており、2月末でそのうち約1割の1370万羽ほどが殺処分になった。
たかが1割と思われるかもしれない。しかし、21年に高病原性鳥インフルエンザが流行しており、全ての養鶏場が元の羽数に回復したわけではない。餌付け羽数は4.5%くらい減少している。従って、コロナ前に比べれば1割を超える数の採卵鶏がもともと減っていた。
度重なる高病原性鳥インフルエンザの流行ばかりでなく、餌の価格の高騰で、卵を売ってももうけが出ない状況に辟易(へきえき)し、意欲が減退している生産者も多いという。
現状は、殺処分の急増により、ニーズは変わらないにもかかわらず、供給が減ったために商品不足が起こっている。日本人は卵が好きな国民で、IEC(国際鶏卵委員会)によれば、21年における日本人1人あたりの年間鶏卵消費量は337個。これはメキシコの409個に次いで世界2位だ。
高病原性鳥インフルエンザにかかった鶏舎では、飼っていたニワトリを全て殺処分し、餌も全部廃棄する。消毒をして、本当にウイルスがいなくなったのかを検証するために、まずは検査用のおとりの鶏を入れて、最低40日間、鳥インフルエンザにかからないかをチェックする。
その後、本格的にニワトリを入れて育てることになる。殺処分から次の雛を導入するまで3〜4カ月、さらには雛が成長して卵を産み始めるまでは、半年かかるとみなければならない。
その間、生産者は保険金が出るなど、生活の保証はされているものの、卵を販売して収入を得ることはできない。
卵不足の影響は、最短でも半年くらい続くと見なければならない。
安い卵はもう限界
卵は生鮮食品であり、一部加工食品で輸入はあるもの、ほとんどが国産である。
従って、海外からの調達は期待できない。
また、厚労省によれば、今シーズンの海外の高病原性鳥インフルエンザは、北米、欧州、東アジア、インドなど北半球の大半に広がっている。
カモ、ツル、ハクチョウなどの渡り鳥がウイルスを運んでくるといわれており、人類にとって食料安全保障上の脅威となっている。かといって、野鳥を殲滅(せんめつ)させるのは、生態系を破壊することになり、地球環境を守るうえでも、動物愛護の点からも、あまりに問題がある。
渡り鳥が日本から旅立つ4〜5月くらいには、鳥インフルエンザが収まってくる。これが毎年のサイクルである。
ニワトリにワクチンを打つことも検討されたことがあるが、完全に防ぐのは難しい。安全性も確認されておらず、日本を含めてどの国もやっていない。
実際のところ、鳥インフルエンザの感染力が強くなる傾向があるのに対して、根本的な打つ手がないのが現実だ。
この状況を見る限り、今後も養鶏農家の状況は厳しく、これまでのような安価な卵を食べられなくなる公算が高い。卵は物価の優等生から、残念ながら卒業していく流れだ。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - なぜ女子の半分が泳いでないの? ジェンダーレス水着の開発者が語った“忘れられない光景”
フットマークのジェンダーレス水着が話題になっている。性の悩みだけでなく、さまざまな理由で「肌を隠したい」生徒のニーズに対応するのが狙い。開発者にその背景を聞いた。 - トイレ利用後に買い物しない人が約4割!? ローソンがトイレの扉にアートステッカーを貼った背景
全国のローソン店舗のトイレ付近に、アートステッカーを貼る取り組みを始めた。トイレをいつもきれいに使ってくれる人への感謝を示す。背景にあるコンビニトイレの課題とは? - ファミレスは危機に陥っている!? サイゼリヤとガストで明暗が分かれたワケ
ファミレスの2大巨頭「サイゼリヤ」と「すかいらーくHD」。すかいらーくの主力であるガストが、サイゼと比べて業績面で苦戦している。背景には何が? - パソナの淡路島移転計画はどうなっている? 家族で引っ越した社員が語ったリアルな日常
パソナが着々と社員の淡路島移住を進めている。実際に働いている社員はどういったことを考えているのか。現地で増えている商業施設の状況も取材した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.