「盲点だった市場」 ホリエモンがMVNO事業に商機を見いだした理由:トークンも付与(1/2 ページ)
MVNO事業やモバイルWi-Fi事業などを手掛けるエックスモバイルと、実業家の堀江貴文氏は3月16日、新MVNOブランド「HORIE MOBILE(ホリエモバイル)」をローンチし、格安SIMの予約受け付けを開始した。
MVNO事業やモバイルWi-Fi事業などを手掛けるエックスモバイルと、実業家の堀江貴文氏は3月16日、新MVNOブランド「HORIE MOBILE(ホリエモバイル)」をローンチし、格安SIMの予約受け付けを開始した。
同ブランドのコンセプトは「参加できる、応援できる、未来に加速するLCCモバイル」だ。NTTドコモのネットワークを用いて、月20GBのデータ使用量と1回5分間のかけ放題を付けて月額3030円(税込)で提供する。今後は、電話のかけ放題や端末補償の他、50GBにアップグレードするサービス、海外向けのモバイルWi-Fiルーターなども提供予定だ。
堀江氏は「これまで盲点だった市場」だと話す。日本のMVNO市場に、どのような商機を見いだしたのか。
MVNOはドコモやSoftBank、auなどの大手キャリアから通信回線を借りて、通信サービスを提供している通信事業者を指す。一般的に「格安SIM」「格安スマホ」と呼ばれ、大手キャリアよりも通信量が安いのが特長だ。
堀江氏は、「一昔前には通信回線がつながりにくい、遅いという状況があったため、今も日本では“安かろう悪かろう”のイメージがある」と広がらない理由を説明する。実際に、スマートフォン、タブレットを中心とした消費者動向や市場調査を手掛けるMMD研究所の調査によれば、スマートフォンを利用している18〜69歳で「MVNO」を契約している割合は9.7%にとどまっている。
だが堀江氏によれば、現在のMVNOは大手キャリアと通信速度で大きな差はないという。特にホリエモバイルはドコモと同じ回線を利用しているからこそ、「航空業界のLCCのように、『ホリエモバイル=通信業界のLCC』と訴えていきたい」(堀江氏)と意気込む。MVNOの認知度が低いという課題をクリアすることが当面の目標だ。
堀江氏が共同事業として参入 「これまで盲点だった市場」
エックスモバイルは新ブランドで、堀江氏を広告塔として起用しているわけではない。同氏とエックスモバイルとの共同事業という位置づけだ。
同社の木野将徳社長は、「起業から10年間がたち、格安SIM・スマホ普及のためにやれることはやり尽くしました。これまでのネガティブなイメージを変え、新規契約や機種変更時の選択肢となるために、堀江さんにオファーしました」と勝負の姿勢を見せた。
混沌とした日本の通信業界を変えたい背景には、2004年に19歳で起業してからフラワーショップなどを経営後、27歳で単身マレーシア移住時に知った格安航空会社エアアジアの存在がある。エアアジアがマレーシアなどの航空会社のビジネスに風穴を開けたように、日本でも格安SIM・スマホが大手キャリアに風穴を開けられる可能性があると見込んで、13年に日本でエックスモバイルを創業した。
22年に木野氏からオファーを受け、堀江氏は「これまで盲点だった市場」に気づいた理由を語る。
「家計が苦しい世代で、どこにお金がかかっているかを調べると、だいたいが携帯電話料金。月5GBしか使っていなかったり、電話もほとんどかけなかったりするのに大手キャリアのヘビーユーザー向けのプラン・サービスに入っていることがあります。料金プランを見直すだけで家計が楽になる可能性があるのです」(堀江氏)
実際、家で固定回線を敷いていて、外ではデータ容量をそこまで消費しないビジネスパーソンも少なくない。
エックスモバイルの資料によれば、これまでのエックスモバイル契約者の乗り換え前後の料金を比較すると、平均で9284円から3557円まで安くなっている。にもかかわらず、なぜ乗り換えする人が増えないのか。
理由は「めんどくさいから」「知らなかった」が最も多い。事実、回線の品質が悪いから価格が安いわけではない。大手キャリアの回線を借りているので、つながりやすさやエリア対応に大差はないのだ。不要なサービスや人件費カットなどによって価格を抑えられている。
大手キャリアからエックスモバイルに乗り換えて良かった点として、「店舗で相談できる」が最も多かったのも見逃せない。全国170カ所ある店舗では、乗り換え手続きや端末修理サービスなど各種サポートが受けられる他、出張先や海外でもスポット利用できるレンタルWi-Fiサービスも提供していく予定だ。
堀江氏は「例えば、同じようなプランであるドコモ・ahamoは基本的にオンラインで契約をします。ですが年配の方など分かりづらいと感じている人は一定数います」と、取り残されているユーザーの存在を指摘した。大手キャリアが店舗を減らす方向にある中、エックスモバイルは北海道から沖縄まで全国各地に実店舗や代理店舗を増やしていく方針で、取り残された人もサポートできる強みがある。
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