イトーヨーカドー、逆転狙った「幕張店」の今 再建のカギはドラッグストア化!?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)
イトーヨーカ堂の苦戦が続いている。衣料品の不振などが響いた。幕張の新モデル店で思ったような成果が出なかったことも背景にあると筆者は指摘する。
どうやって再建するのか
イトーヨーカ堂が不振のトンネルから抜け出せないのは、各分野の強力なディスカウンターに顧客を奪われただけでなく、SC(ショッピングセンター)の開発に不熱心であったことが、もう1つの原因として挙げられる。
同社がSCの開発に本格的に進出したのは、2005年に「アリオ」を展開し始めてからだ。一方、イオンが「ダイヤモンドシティ」などと名乗っていたSCの名称を「イオンモール」に統一したのは07年からだが、その頃からより一層、積極的にSC事業に取り組むようになった。
イオンモールのモール数は199店舗(国内164/海外35)に達している(22年12月15日現在)。
それに対して、「アリオ」は20店舗にとどまる。
イオンモールのライバルとして挙げられるのは、三井不動産の「ららぽーと」だが、店舗数自体は21店(国内20店/海外1店)にとどまる。しかし、店舗数がアリオとほぼ同数であっても、ららぽーとの存在感に比べて、アリオはあまり認知が進んでいないのが実態である。
イトーヨーカ堂がSCをおろそかにした損失がいかに巨大だったか。スーパー業界1位のイオンの連結決算を点検してみよう。
イオンの22年2月期の決算を見ると、営業収益8兆7159億円(前年同期比101.3%)に対して、営業利益は1743億円(同115.8%)。
内訳を見ると、総合スーパーのGMSは営業収益3兆3004億円(同 98.2%)、営業損失23億円の赤字と、赤字幅が前年より87億円改善したとはいえ、2年連続の赤字とパッとしない。
何もGMSの不振は、イトーヨーカ堂に特有な現象ではない。イオンも苦しんでいる。
一方、ディベロッパー事業は営業収益3667億円(同112.1%)ながら、営業利益は388億円もあり前年より31億円増えた。つまり、イオンモールの開発・運営は、イオンの総合スーパーの不振を帳消しにして余りあるほど、イオンの発展に貢献しているのだ。
また、イオンは主に食品スーパーのSM、主にドラッグストアのヘルス&ウエルネスの分野も好調だ。
SMは営業収益2兆5206億円(同1.1%減)、営業利益は305億円で前年より111億円減っている。しかしながらコロナ前の前々年よりは、営業収益が2.0%増えている。また、営業利益も前々年よりは140億円増であって、前年が良すぎただけで引き続き好調と目される。
さらに、ヘルス&ウエルネスでは、イオンはクループ傘下にドラッグストア業界最大手のウエルシアホールディングスを擁している。営業収益1兆310億円(同7.8%増)、営業利益419億円は前年より3億円増と利益率は下がったが、売り上げの面では高い成長率を維持している。
従って、イオンの例から見ても、食品分野、医薬品、化粧品、生活雑貨を販売するドラッグストアが扱う分野を強化すれば、イトーヨーカ堂の再建も見えてくるという仮説が成り立つ。
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