イトーヨーカドー、逆転狙った「幕張店」の今 再建のカギはドラッグストア化!?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
イトーヨーカ堂の苦戦が続いている。衣料品の不振などが響いた。幕張の新モデル店で思ったような成果が出なかったことも背景にあると筆者は指摘する。
イオンの牙城でどう戦う?
幕張を牙城とするイオンも黙ってはいない。
去る3月18日には、JR京葉線に新駅として幕張豊砂駅が開業。「イオンモール幕張新都心」と直結され、車でアクセスするだけでなく、電車でも行けるようになった。本当に駅を降りて目の前にイオンがあり、歩いて1分もかからない。このインフラ整備は大きい。駅だけでなく、駅前広場に発着する路線バスからも、買物客がぞろぞろとモールに吸い込まれていく。
改装効果によってイトーヨーカドーに流れていた顧客も、戻ってくるだろう。
イトーヨーカドー幕張店は、JR総武線の幕張駅と京成幕張駅から徒歩圏にはあるものの、歩けば10分くらいかかってしまう。駅前で直結している店舗ではなく、駅を利用する人にとってそれほど便利とは言い難いからだ。ただし、店の周辺に住んでいる住民はよく自転車を活用して来店している。サービスで自転車置き場の前に、タイヤの空気入れも置いてあって、なかなかの気遣いだ。
イトーヨーカ堂が新しいモデル店として構築した幕張店が、幕張豊砂駅が開業した影響で閑古鳥が鳴くようだと、会社の士気にも影響してくる。物言う株主にも、納得してもらえる説明ができなくなってしまう。既に3月24日、バリューアクト・キャピタルは企業戦略の失敗を理由に、5月に開催が予定されているセブン&アイの定時株式総会で、14人の取締役のうち4人の再任に反対すると通知した。
もっとも、幕張豊砂駅が開業することは前から分かっていたことだし、イトーヨーカ堂としても想定内で、あえて環境の厳しい場所でチャレンジしたかったのだろう。
日本の流通トップ2が雌雄を決する幕張の地。イオンの大逆襲で、イトーヨーカ堂の構造改革は早くも正念場を迎えている。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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