「ポン!」の音が消えた 脱ハンコが広がって、シヤチハタはどんな手を打ったのか:週末に「へえ」な話(4/4 ページ)
「脱ハンコ」の動きが広まっているが、大手ハンコメーカーのシヤチハタはどのように対応しているのだろうか。時代の流れに取り残されているのでは? と思いきや、自社の技術を生かして「B2C」でヒット商品を連発していたのだ。担当者に開発の秘話を聞いたところ……。
残念ながら消えた商品も
……と、ここまでシヤチハタのヒット商品を紹介してきたわけだが、最後に「ものすごく期待したのに、残念ながらスポットライトを浴びなかったスタンプ」を紹介する。その名は「stamkey(スタンキー)」だ。
この商品の特徴は、QRコードを印面に施していること。例えば、自身のWebサイトをつくって、スタンキーをポンと押すだけでアドレスを教えることができる。「自分のWebサイトを見てもらいたい人、見てもらいたくない人っていると思うんですよね。見てもらいたい人には、名刺などにポンと押す……ことを想定していましたが、残念ながら終売しました」(滝澤さん)
売れなかった原因は、どこにあったのか。いくつか考えられるが、「商品化のタイミング」が大きい。スタンキーを発売したのは、04年のことである。スマホはまだ発売されていないし、いまほどQRコードは普及していない。こうしたことを考えると、やはり商品化が時期尚早だったと言える。
であれば、いまはどうか。スマホを所有している人は多いし、QRコードを決済に使う人も増えた。シヤチハタもこのタイミングを逃してはいけないと考えたようで、再び同じようなコンセプトの商品を投入した。20年6月に「myQR」(1500円+税〜)を発売したものの、いまのところヒット商品の仲間入りはしていない。この結果を踏まえると、QRコードはスタンプで押すのではなく、紙に印刷されたモノのほうが使いやすいと考えている人が多いようだ。
とまあこんな感じで、老舗のハンコメーカーにとって、商品開発にタブーはなさそうである。新しいアイデアが出てきて、「これいいかも」という手ごたえを感じれば、どんどん商品化していく姿勢がうかがえた。
ポン、ポン、ポン――。商品開発のエラい人の机から“この音”がたくさん聞こえてくれば、消費者をあっと驚かせるような商品が次々に生まれてくるのかもしれない。
いや、追加取材したところ、シヤチハタでは決裁時にリアルのハンコは使っていなくて、自社のクラウド決済を活用していることが分かった。というわけで、マウスをクリックする音「カチ、カチ、カチ」が正しいようだ。
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