「ポン!」の音が消えた 脱ハンコが広がって、シヤチハタはどんな手を打ったのか:週末に「へえ」な話(3/4 ページ)
「脱ハンコ」の動きが広まっているが、大手ハンコメーカーのシヤチハタはどのように対応しているのだろうか。時代の流れに取り残されているのでは? と思いきや、自社の技術を生かして「B2C」でヒット商品を連発していたのだ。担当者に開発の秘話を聞いたところ……。
社内からは「反対」の声ばかり
ところで、スタンプ台「いろもよう」は、どのようにして開発したのだろうか。担当者が「こんな商品はどうかな?」とプレゼンしたところ、社内からは「反対」の声ばかり。「色を変えただけじゃないか」「そんなモノ、売れるわけがない」「簡単につくれないよ」といった否定的な意見がどんどん出てきた。しかし、これも仕方がないのかもしれない。先ほど紹介したように、長い歴史の中で、スタンプ台は6色しかつくってこなかったのだ。
ただ、企画の担当者は簡単に引き下がるわけにはいかない。市場調査の結果を見せて、「消費者はこういった色を求めているんです」と説得に回った。「最後は商品企画部の“熱意”が伝わったのかもしれません。商品開発のゴーサインがでました」(滝澤さん)
リーマンショックをきっかけにB2Cの市場に打って出たといった話を紹介したが、発売してから数年たって、いきなり大ヒットにつながったケースもある。16年に発売した「手洗い練習スタンプ おててポン」(500円+税)だ。
この商品の特徴は、スタンプを「付ける」から「消す」ことである。手のひらにスタンプを押して、せっけんで30秒以上洗うと印影が消える。発売当初の売り上げはそこそこだったが、4年後にいきなり注目が集まった。この年に何があったのか。ご存じの通り、新型コロナの感染拡大である。
感染を予防するために、子どもに手洗いの習慣をつけさせたいというニーズが高まった。コロナ対策グッズ売り場やECサイトで売れに売れて、20年の出荷数は40万個以上に。この数字は、19年の30倍以上になるので「あまり売れないなあ。商品ラインアップから、この商品を“消そうか”」という動きにならなくてよかった事例である。
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