「ディズニー誘致」の歴史に“地上の星”がいた! 何者か:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
ディズニーランドが開業40周年を迎えたことで、誘致成功に導いた人々があらためて注目されている。オリエンタルランドの初代社長など、さまざまな人物にスポットが当たっているが、筆者の窪田氏はある人物に注目している。何者かというと……。
最後にものを言うのは「人脈」
さて、そんな三者の関係性を頭に入れたうえで、京成電鉄と米ディズニーの交渉を振り返ってみよう。オリエンタルランドの公式Webサイトによれば、ディズニーとの交渉が正式にスタートしたのは74年だが、その2年前から事前調査が行われている。
『レジャー施設「オリエンタルランド」実現に向けて、1972年から1973年にかけて行われた欧米レジャー施設の調査の結果、当社が具現化すべき構想の核となる施設は米国の「ディズニーランド」においてほかないという結論に達しました。そして1974年2月、当社はディズニー社へ書簡を持って正式に誘致を申し入れ、ディズニー首脳の来日視察を要請しました』(オリエンタルランドの公式Webサイト)
この大きな動きがあった時期の73年、一人の男が役員として迎えられる。そう、渡辺氏だ。それまでは総務部嘱託だった渡辺がここで急に、川崎社長の懐刀として、海外の視察や市場調査、そしてこれ以降の交渉にかかわるのだ。
なぜこんな唐突な人事があるのか。関係者が鬼籍に入っている今となっては分からないが、筆者は「正力氏とのパイプ」が重宝されたのではないかと考えている。
先ほど申し上げたように、正力氏は「原子力PR」でロイ・ディズニーに「貸し」があるなど深い関係がある。そして、渡辺氏は30代から正力氏と関係がある。
さて、そこで想像していただきたい。このような関係性を知っているオリエンタルランドの川崎社長が、いよいよディズニー社と本格的に誘致の交渉をしようと考えたとき、どんな戦略を考えるだろうか。
経営トップのロイ氏と昵懇(じっこん)の正力氏ともパイプがある渡辺氏を起用すれば、不測の事態にも対応できるし、何かと有利に交渉が進むのではないかと考えるのではないか。
ビジネスパーソンならなんとなく分かるだろうが、巨大なプロジェクトや社運をかけた商談などで、ここぞという勝負のときは、現場の人々の交渉力や行動力もさることながら、なんやかんやと最後にものを言うのは「人脈」だったりするのだ。
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