なぜ新入社員研修が「青春18きっぷ一人旅」なの? 考案者が語った「やらされ感ゼロ」の仕掛け:転職してすぐ企画(1/3 ページ)
島根県にある会社が新入社員を「一人旅」させた。青春18きっぷを渡し、5日間自分の計画に沿って移動させるというもの。どういった狙いがあったのか? どんな結果になったのか?
卸売業などを手掛ける「山陰パナソニック」(島根県出雲市)が、ユニークな新入社員研修を実施している。新入社員に「青春18きっぷ」を1枚渡し、各自が考えた計画に基づき5日間一人旅をさせるというものだ。2022年12月中旬〜下旬に1回目を実施し、新入社員22人が参加。23年度も引き続き実施するという。
研修を企画した同社の船井亜由美氏に狙いを聞いた。
研修の概要
研修は次のようなルールで運用されている。
自宅から出発し、各自が立案した計画に沿って移動し、5日目に帰宅する。予算は1日1万円で、宿泊費、食事代、移動にかかる費用を全てやりくりする。予算オーバーした分は自腹となる。
旅の内容については各自が自由に決めてよいことにしている。船井氏は「自分で立てた計画なので『やらされた感』がないのがポイントです」と説明する。
ただ、立ち寄った土地の人たちと触れ合うことを必達項目としている。22年度の研修では、「1日当たり10人と会話する」「地域の共通課題を聞く」を目標としていた。
ある新入社員は1日目に松江市を出発し、奈良、金沢、京都などを経由して5日目に松江市に戻った。旅先では商店街にいた人や観光客と会話をして、「新幹線開通後に物価が上昇した」「コロナで多くの店が入れ替わった」といった地域課題を聞き出した。
実際には1日10人と会話できなかったり、地域の課題を十分に聞き出せなかったりというケースもあった。しかし、船井氏は「人と話すきっかけになればと考えていました。また、知見を広めてもらう狙いもありました」と語る。
別の新入社員は、事前に宿は確保せず「ヒッチハイク」宿泊にチャレンジ。毎日100人以上に声をかけた(宿が確保できなかった日はネットカフェで宿泊)。
島根県は車社会なので、電車に乗るのが初めてという社員が多数いたという。
研修期間中は、公式SNSに撮影した画像を投稿して情報共有する。また、万が一の事故などに備え、人事担当者と24時間連絡が取れるようにしていた。
研修が終わったら各自が作成した旅日記を1冊の本にまとめて、家族と一緒に読めるように配布した。データはURLで公開し、社員全員に見てもらうようにしたという。
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