なぜ新入社員研修が「青春18きっぷ一人旅」なの? 考案者が語った「やらされ感ゼロ」の仕掛け:転職してすぐ企画(2/3 ページ)
島根県にある会社が新入社員を「一人旅」させた。青春18きっぷを渡し、5日間自分の計画に沿って移動させるというもの。どういった狙いがあったのか? どんな結果になったのか?
なぜ実施することにしたのか
今回の新人研修を企画した船井氏は研修の狙いについて「地域の人と話をする」「限られた資源(予算や時間)の中で、事前に立てた計画を実行するという仕事の基礎を身に付ける」を挙げた。
コロナ禍の影響で大学の授業がオンラインとなり、自宅から外に出る機会が少なかった新入社員は少なくない。また、学生中に一人で旅行にも行けなかったというケースもあった。
他者とコミュニケーションをとる機会が学生時代に乏しかったとしても、配属される職場ではたくさんの大人と一緒に仕事をしなければいけない。そこで、周囲と強制的に触れ合うような機会をつくる目的もあったという。
新入社員は4〜9月に全部で8つある部門を回ったりした後、10月に配属となる。一人旅の計画を立案するのは10月下旬からとなるが、「電車の乗り方」などを周囲の先輩社員に相談してもらうシーンを想定していた。
事前に計画を立てても、実際にスタートしたら予定通りいかないこともある。そうした際、各自がどのようにリカバリーしていくのかを見ていく狙いもあったそうだ。
仕事との関連性は?
今回の研修を実施した背景には、会社で手掛けている事業との関連性もある。
同社はパナソニックなどの製品を取り扱っており、家電・設備・住宅・公共施設への納入提案や施工管理、アフターサービスを一括で行っている。
取り扱う製品の幅が広いだけでなく、顧客の要望に応じてさまざまな提案をする。場合によっては、他部署と協力する必要がある。
また、製品を納入して終わりとはならず、その後のアフターサービスの提供や、顧客との信頼関係維持も求められる。
このように、さまざまな課題に対してマルチに対応可能な人材育成をしたいと考えている。専門家というよりはファシリテーターとしての能力が重要だという。
事業を展開している島根県や鳥取県が抱える課題もある。都市部と違い、高齢化率が高いエリアなので、既存の事業だけを手掛けていては成長できない。新入社員には新ビジネスへの参加を期待している。
山陰パナソニックに在籍する社員は、高卒・大卒ともに山陰地方出身者がほとんどだという。大学進学で一時的に地元を離れても、就職時に戻ってくるというケースも多い。だからこそ、見識を広める機会が求められていた。
船井氏は「『かわいい子には旅をさせよ』と新入社員をあえて旅立たせる。非日常体験を通じて人間として成長し、自発的なキャリア開発につなげる狙いがあります」と説明する。
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