行列、予約必須…… 「ガチ中華」が続々オープン ここまで注目される理由は?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)
本物の中国で食べられている中華「ガチ中華」。行列ができる繁盛店が続々オープンしている。背景に何があるのか?
蘭州ラーメンの存在感
ガチ中華で忘れてはならないのは、「蘭州ラーメン」だ。
これは、中国本土には5万軒以上あると言われ、非常にポピュラーな牛肉ラーメン。豚を食材に使っていないことから、イスラム教徒でも食べられるハラール食品として提供が可能な中華料理でもある。中国は広く奥深い。こういう中華もあるのだ。
蘭州という都市は中国西北部甘粛省の省都。黄河上流が市内を流れ、シルクロードにある人口400万人を超える大都市だ。甘粛省は、西隣は新疆ウイグル自治区となっており、回族などイスラム教徒の住民も数多く住んでいる。世界遺産の敦煌・莫高窟も省内にある。
蘭州ラーメンが日本に上陸したのは2017年。神田神保町に「馬子禄 牛肉面(マーズルー ぎゅうにくめん)」が上陸し、行列ができる繁盛店となった。
店長の清野烈氏は日本人で、大学は北京に留学。そこで出合った蘭州ラーメンに魅せられた。日本人にも親しみやすいはずの蘭州ラーメンだが、日本では食べられる店が皆無。
それなら自ら開業しようと一念発起した清野氏は、現地に行って何店もの蘭州ラーメンを食べ歩き、一番おいしいと感じた「馬子禄」で実際に修業。日本での営業許可をもらってオープンした。とんとん拍子に修業ができたわけでなく、最初は怪しまれて追い返され、何度も足を運んだ結果、熱意が伝わった。
馬子禄は100年以上の歴史を持つ老舗。中国政府は本物の老舗だけに「中華老字号」の称号を付与しているが、蘭州ラーメンで中華老字号に認定されているのは、馬子禄のみという。それだけ格式の高い店であり、よほどの覚悟がなければ背負えない商号だ。本物の中国の味、まさにガチ中華の普及に、志ある日本人も寄与している。
馬子禄の「蘭州牛肉面」(1050円)は、3つの大きな特徴を有している。
スープは、国産のハラール認証牛の肉や骨を10種類以上の薬膳スパイスと一緒に、長時間煮込んでつくっている。100年継承された秘伝のあっさり目のスープだ。
麺は蘭州の本店で修業を積んだ職人が、注文が入ってから手打ちする。麺については、細(細麺)や韮叶(平麺)など9種類ある。
一番人気は細。定番は韮叶。店内では厨房で細麺、太麺、平麺、三角麺を自在に作る芸術的な職人技を見られるようになっており、それも売りだ。
トッピングには、薬膳スパイスで煮込んだ牛肉、大根、手作りラー油、パクチー、葉にんにくを散らして彩りを添えている。希望により、パクチー抜き、ラー油抜きも可能だ。
同店の18年の来店データによれば、30代を中心に男女比は2:1ほどで、ラーメン店にしては女性の比率が高い。国籍別では、日本人が半分以上ながら中華圏も4割近く来店しており、故郷の味を求めて遠くから来る中国人も多い。
蘭州ラーメンの店は、東京、大阪を中心に徐々に増えつつある。
20年に大阪にオープンした「甘蘭牛肉麺」は、蘭州出身の張鉄林シェフによって立ち上げられた。現在、京阪神と東京に計11店まで増えている。甘蘭牛肉麺は、今後FC(フランチャイズ)によって店舗を拡大する計画があり、蘭州ラーメンが日本でもっと身近になっていく可能性は高い。
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