暴言に耐えかね「退職」も freeeの「カスハラ対策方針」が悪質クレームに示したこと:3カ月に1回発生(1/3 ページ)
freeeは2月、不当・悪質なクレームについての対応方針を明らかにした。2022年夏にかかってきた脅迫電話がきっかけだったという。カスタマハラスメントによって休職・退職者が出るなど不利益を被ることが続き、対応方針公開に至った。それに至るプロセスや公開による反響などを取材した。
クラウド会計ソフトを展開するfreeeは2月、不当・悪質なクレーム(カスタマーハラスメント、以下カスハラ)についての対応方針を明らかにした。カスハラに該当するクレームがあった場合は、サービス提供を断ることもあるという。
今回の決断を下した背景には、freeeが「過剰要求」「詐欺」「脅迫」などの被害に遭ってきたという事実がある。プレスリリース発表後、社会からはfreeeを支持する声が多く聞かれた。
しかし、この決定について実は社内からは反対意見もあったという。本記事では対応方針の策定を担当した、カスタマーハラスメント対策推進リーダーの久保友紀恵氏に方針策定に至った経緯やその準備、現在の運用方法などについて詳しく話を聞いた。
オペレーターを休職に追い込んだ、ある脅迫電話
「ふざけた回答してんじゃねえぞコラァ。殺すぞこら。ああん? なめてんのかよ、ごらぁ」
2022年夏、freeeのカスタマーセンターに怒りの声が鳴り響いた。これは実際の録音を基にした言葉である。罵声は40分以上続いた。震えながら対応したオペレーターは何とか耐えたが、その後しばらく出勤ができなくなった。
freeeのカスタマーセンターには個人事業主だけでなく、法人からも多くの問い合わせが寄せられる。確定申告などのピーク時には、問い合わせ数が5倍に膨れ上がるという。
そうなると当然、カスハラまがいの問い合わせも増えてくる。中には「お前、頭悪いな」などとオペレーターを見下した発言や、「営業時間外でも対応しろ」といった過剰要求、個人情報を聞き出そうとする電話も月に数件かかってくるそうだ。
先のような脅迫にいたるケースは少ないものの、カスハラに当たる問い合わせは3カ月に1回程度発生している。その結果、オペレーターが休職や退職に追い込まれたり、警察沙汰に発展したりするケースもあるという。これまでの被害の大きさと今回の脅迫事件をきっかけに、freeeはカスハラ対応方針の策定を決断した。
「私たちは経理や人事など、大切な機密情報を扱う会社です。(脅迫するような)一部のお客さまだけに時間を取られて、他のお客さまがないがしろにされるようなことがあってはいけません」とし、オペレーターだけでなく、関係する全ての人のために決心したのだった。
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