「使いにくい」と話題になった松屋の券売機 対面サービスこだわる吉野家が「タブレット」「新型店舗」に注力する背景:注文と決済(2/3 ページ)
SNSで松屋の券売機が話題になった。では、吉野家とすき家の注文方法はどうなっているのか。両者の戦略を調べた。
人によるサービスにこだわってきた吉野家
吉野家はあえて券売機を置いてこなかった。吉野家の安部修仁社長(当時)は経済誌のインタビューにおいて、生産性向上に券売機は必要との認識を示したうえで、店員が利用客に直接サービスすることの重要性を説いている(出所:『PRESIDENT』2007年10月1日号)。
ただ、現在の吉野家がテクノロジーの活用に消極的というわけではない。例えば、23年2月期の決算説明会資料では、テークアウト専用注文タブレットを設置する店舗数を、現在の199店から284店に増やすとしている。また、店内で注文するためのタブレットを導入する店舗を85店から112店に拡大する。
現場の負担軽減や人手不足解消のため、外食チェーンでは注文用タブレットの導入を積極的に進めている。吉野家でも直接店員に注文するシーンが減ることになるが、サービス低下の心配はないのだろうか。
この点を質問すると、広報担当者は「タブレットが導入されても、店舗におけるお客さまと従業員が接するタッチポイントは、あいさつや商品の提供などさまざまあります。タブレットの導入店舗・非導入店舗に関わらず、最高のQHAを提供できるよう各店舗で尽力しています」と回答した(QHAについては後述)。生産性向上の取り組みによって、顧客の利便性を高めることは重要だが、「人が行うことで価値が生まれること」にはこだわっていく姿勢だ。
また、利用客が店内で心地よく過ごせるようにさまざまな取り組みをしている。その一環で、外食チェーンで一般的に重要だとされている「QSC」(クォリティー、サービス、クレンリネス)ではなく、「QHA」(クォリティー、ホスピタリティ、アトモスフィア)という言葉を21年から使うようになっているという。ホスピタリティー(心からのおもてなし)によって、アトモスフィア(店舗の雰囲気)を向上させようという狙いだ。
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