“おっさんビジネス用語”って面白いよね 若者が「過去を楽しむ=危険」なワケ:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「社内運動会」「一丁目一番地」「全員野球で」といった昔のビジネス用語が話題になっている。若者の間で盛り上がっているようだが、こうした傾向に問題はないのだろうか。ビジネスの世界で、過去を楽しむことはキケンであって……。
「軍隊式の働き方」が次世代に
戦後も基本的には、同じことが繰り返されている。焼け野原の経済復興をした人のほとんどが、軍隊で復員した経験のある人や「産業戦士」なので当然、戦後のベビーブーマーたちに「軍隊式の働き方」を叩き込んだ。そうして、「産業戦士2世」となった人々が次の世代へ、という感じで「軍隊式の働き方」世代間連鎖が続いた結果が、現在の日本企業である。
もちろん、これは悪気があって後世に伝えているわけではない。旧日本軍の人材教育やマネジメントを叩き込まれた戦中世代は、「今の自分があるのはあの立派な教育があったからだ」と思い込む。だから良かれと思って、後輩や部下にも同様の教育を施していく。体罰を受けて一流選手になった人が、指導者になると、“選手のため”と体罰をしてしまうのと同じ構造だ。
そんな世代間連鎖の分かりやすい例が、「作戦要務令」という旧陸軍のマニュアルだ。これは「歩兵は戦闘の主兵」とされ、情報・補給・宣伝・医療などは軽視され、銃剣突撃の白兵戦を讃美している。それがなんと、戦後になると今度はビジネスパーソン必携の書となっていくのだ。
『かつて高度経済はなやかな時代に、この陸軍のバイブルを商売のバイブルに応用しようという知恵ものがおり、企業ゼミナールのテキストにも使われて復刻版が多いに売れたことがある。(中略)日本陸軍の攻勢重視、歩兵第一主義と、ビジネス重視、セールス第一主義が共通しているというのだろうか。ビジネスを戦闘でみなせば、お客さんは目標あるいは敵で、会社は軍隊だから企業戦士などという言葉が違和感もなく使われる』(完本 日本軍隊用語集、寺田近雄/学研プラス)
その復刻版のひとつが1963年に出た『作戦要務令―ビジネスからデートまで』((読売新聞社)である。
著者の永田久光氏は1921年生まれで、国家総動員法ができたときには17歳、バリバリの戦時教育を受けた人だ。そんな永田氏は戦後、広告業界で活躍して電通PRの初代社長にもなった。その2年後、旧陸軍のマニュアルを元にしてビジネス書を発行しているのだ。
このような形で社会のメインプレイヤーになった戦中世代によって、「軍隊式の働き方」が「社会人の常識」というパッケージをまとって、戦後生まれ世代へ広められていくという動きが日本全国で起きていたのが、高度経済成長期なのだ。
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